『投資というアートには、あまり知られていない特性がある。大して努力もせず、能力にも恵まれていない素人が、大儲けとはいかないまでも、まずまずの利益をあげられることだ。だが、その容易に達する水準からさらに上をめざすには、高い応用力と一片の英知が必要である。』(ベンジャミン・グレアム『賢明なる投資家』)
投資に努力も能力も必要ないとは、どういうこと?
努力も能力も必要とせず、投資でまずまずの利益を得ることはできるといった、ベンジャミン・グレアム。ベンジャミン・グレアムと言えば、世界一の投資家とも言われるウォーレン・バフェットの師匠です。
そして、先ほどの言葉がのっている『賢明なる投資家』という本は、バフェットに投資の考え方に対して衝撃を与え、グレアムに師事したいと思わせた原点だそうです。
そのグレアムが、投資では努力せずとも、能力に恵まれていなくてもく、まずまずの利益を得ることができると言っているのはなぜなのでしょうか?
投資と言えば、金融街のようなエリートたちの世界というイメージがあるかもしれません。
しかし、グレアムはエリートでなくても、投資で利益を得ることはできるといったわけですが、それには、株式投資そのものが持っている利益を生む力を利用すればいいと考えたからです。
では、株式投資そのものの利益とは何をさしているのか?
簡単に表現すれば、株式市場全体の株価の上昇や配当金ということになります。
株式投資で儲けるためには、基本的に株式市場全体が上昇していないと、なかなか儲かるものではありません。
逆に、株式市場が好調で上昇し続けている時期というのは、株式投資に参加している人のほとんどが儲かっている時期にもなります。
そして株式市場というのは、長期的には上昇基調にあるという特徴があります。
株式市場の規模の拡大は、その国の経済規模の拡大とほぼ同じ意味になってきます。
国の経済規模というのは基本的には成長するようにエネルギーが働いているため、自然に国の経済の規模は大きくなる傾向にあります。
そして経済規模の拡大とともに株式市場の規模の拡大していくというわけです。
だから、経済が成長する国の株式市場に上場している株式を全部保有していれば、勝手にお金が増えていくということにつながってくるわけです。
結論から言えば、上場している企業の株式すべてを購入し保有していれば、勝手にお金が増える。
というわけです。
ただあるものをすべて買って、ただただ保有する。
とても簡単なことです。大した努力をしなくても、能力に恵まれなくても、株式投資で利益を得ることはできるというわけです。
インデックスファンドを使えば、だれでも儲かる?
『ただあるものをすべて買って、ただただ保有する。』
という作戦を実行するために生まれた投資信託。それが『インデックスファンド』です。
『インデックスファンド』を買って保有するだけで、努力もしない、能力にも恵まれていない、そんな人でも、誰でも株式市場から利益を得ることができる。
これがグレアムの言っている答えです。
そしてこのインデックスファンドを超えるためには、『だが、その容易に達する水準からさらに上をめざすには、高い応用力と一片の英知が必要である。』と言っています。
インデックスを超えるためには、それ相応の努力と、能力が必要になってくるというわけですね。
ここからが大きな問題になってきます。
言葉の受け取り方次第では、努力と能力があれば、『インデックスファンドを超えられる?』と考えるかもしれません。
インデックスファンドを超えようとする努力とリスク?
インデックスファンドを超えようとするならば、努力と能力が必要になる。
しかし、努力と能力があれば、インデックスファンドを超えられるのかというと、これもまた違う気がします。
インデックスファンドと同等の運用パフォーマンスにすることは簡単です。インデックスファンドを買って保有するだけでいいのですから、誰にでもできます。
でも、もしもっとリターンが欲しいと考え、インデックスファンドから離れた運用をしようとすると、今度は、大きく儲かる可能性も見えてきますが、逆に、インデックスファンドよりも成績が悪くなるリスクが出てきます。
簡単で確実な平均値を目指すか。平均値以下になるリスクをかかえながら、株式市場という戦場へ出ていくのか?
そこが大きな分かれ道です。
そしてその結果、その株式市場という戦場に出ていったものの『8割超』がインデックスファンドに負けることになるという話がでてくることになるわけです。
では、この8割の人たちは、全員努力を怠っているのか?それとも能力がないのだろうか?
多分、決してそんなことはないはずです。あえて言うならば、単に運がなかっただけのことなのでしょう。
実は、これが『リスク』なのです。予測がつかない、先が読めない、確実なことはない。そういったものがリスクという事なのです。
リスクのある世界で、うまく行く行かない、たとえ偉大な投資家であっても、どうしても『運』に左右されてしまうところがある。
だから、グレアムは『投資というアート』という言葉を使ったのかもしれません。
確実なことは何もない、何がいいのかもわからない、なんとなく良いなと直感や感覚によって感じること。つまり、感性によるところが投資にも求めらえているという事なのでしょう。
そう考えると、結果的にほぼ確実にリターンが得られると考えられる株式市場そのもののパフォーマンスをそのままそっくり受け取れるインデックスファンドが最適解だよね。
という話になってしまうのかもしれませんね。
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