寄付の本ってあんまり見ないですよね。しかも『寄付をしてみよう、と思ったら読む本』なんてタイトル。
正直、日本人で自分から寄付しようと考える人はあまりいない印象です。
『寄付』という言葉がでると、大概にして、「お金に余裕があるからする」というイメージを持たれる気がしています。「寄付する余裕があるなら、私に頂戴よ?」なんてことを平気で言う人を見かけたこともあります。
おそらく、そういった人たちは『寄付』という行為が何であるのかを考えたことがないのでしょう。
日本人は寄附に積極的ではないというのはよく聞く話です。欧米に比べても日本人の寄付する割合はかなり少ないという話は結構有名です。
そうなってしまっている理由の一つとして、本書では日本の社会性や宗教観などが影響していると言っています。
たとえば、キリスト教に触れた人は、寄付するという行為は、ごく自然に当たり前のように行われている環境で育ってきているため、寄付に対する抵抗感がないという話です。
確かに日本はそういう社会環境ではないわけですから、寄付するという事に違和感を感じるのは当然なのかもしれないと感じました。
でもそれ以上に、本書を読んで感じたのは、私たちが考えている以上に『「寄附」というものがどういうことなのか?』を知らないんだなという事でした。
日本でも東日本大震災という大災害によって、日本人が寄付する事に前向きになってきたと本書では言っています。
自分の身の回りを見ていてもそれには同感です。
というよりも以前よりも「私、寄付しているよ」と口に出す人が増えてきたようにも感じていました。
もしかすると、そういった人たちの中には今までも人知れず寄付をしていた人もいるのかもしれません。ただ、寄付しているなんて人に言ってしまうと、「あの人はお金に余裕がある」なんて思われるのが嫌で、口にしなかったなんて人も少なくないのかもしれません。正直、その気持ちわかる気がします。
そういうことを思ってしまう時点で、寄付というものをきちんと理解していないんだと、本書を読んだことでより分かった気がしています。
この本は、寄付をする前に読んでみるといい本なのかもしれません。
なぜ寄付するのか?、なんのため寄付を募っているのか?、寄付の目的とはなんなのか?
それをわかって寄付をするのと、良くわからずにただ何となく「困っている人を助ける」とぼんやり考えて寄付をするのとでは全然違うような気がします。
タイトル通り、『寄付をしてみよう、と思ったら読む本』でした。
寄付って、選挙のような感覚に近いと今は思っています。
世の中には、どんな社会問題があるのかを知り、それを解決しようと活動しているNPO法人など寄付を募っている人たちに対して、私たちはお金という形で投票している。
そして解決すべき問題であったり、団体として有益な活動しているところには、資金と人材が集まっていく。それが寄付という活動なんだと思いました。
寄付とは、「困っている人を助ける」というよりも、その根本的なところにあるのは、社会問題解決という目的のために行われる行為だという事です。
本来社会問題というのは、政府や行政などが行うものと考えられているのかもしれません。
しかし、これら行政には公平という原則があり、その公平という原則が返って動きを鈍くしてしまっているという話です。
その点、民間団体であるNPO法人などのボランティア団体には、自分の手の届く範囲から支援するということができるため行政よりも動きが速いという利点があるそうです。
東日本大震災の時は、行政に比べて民間の動きの速さが際立っていました。
つまり、社会問題とは行政と民間の2つの力で取り組むのが効果的だということです。
その民間の部分を動かしているのが、『寄付』というわけです。
「社会をより良くしようという目的をもってお金を使う」寄付。この話なにかに似ているなと思いました。
そうです。『投資』と似ているなと思いました。
『投資=自分が儲ける』と思われていることもありますが、本来投資とは、よりより商品やサービスを作り出すために『お金を提供する』行為です。
お金を使ってよりよい社会実現のためと言葉を変えてもそう間違ってはいないと思います。
悪いことをしてお金を儲けている会社とみんなが喜んで使っている商品を作っている会社、どちらに投資したいと思いますか?
比べるまでもないことだと思います。
寄付と投資は似ている、そう思いました。寄付も投資も、根本にあるのはよりよい社会を実現するためということです。そう考えると、寄付に対する抵抗感も薄れてくるのではないかと思いました。
最後に、本書の中にも出てきた話ですが、寄付に関する教育が足りない。というもの問題なのかもしれません。
日本でファイナンシャルリテラシーなどの言葉を使ってお金の教育が必要といわれて久しいですが、その中で寄付の教育も、お金や投資の教育と一緒に行われていくべきものなのかもしれませんね。
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