バランスファンドにレバレッジをかけるという新しいコンセプトの投資信託『グローバル3倍3文法ファンド』。バランスファンドにレバレッジをかけることで、リスクとリターンのバランスが良くなるということだけど、どういう仕組みなのでしょうか?
バランスファンドにレバレッジをかけるって?
バランスファンドとは、株式や債券、不動産など複数の資産(アセット)クラスに分散投資する投資信託を言います。
複数の資産に分散投資する目的は、リスクの軽減にあります。
例えば、株式投資が下落しているときは、債券の価格が上昇する傾向にあるなど、株式と債券を同時に保有することで、お互いの値動きを打ち消しあい短期的な価格変動リスクを軽減すると考えられています。
この考え方を基本として現代ポートフォリオ理論が考え出され、今では金融商品の多くに採用されています。ロボアドバイザーとして注目されている、AIを使って、その人に合わせたリスク許容度に合った資産配分を算出し自動で運用するというサービスもこの現代ポートフォリオ理論をもとに作られています。
そして、レバレッジとは、投資した金額よりも実際の投資額を膨らませる方法を言います。
要は借金のことです。たとえば、100万円というお金を用意して、そこに借り入れで200万円を追加した場合、総投資額は300万円になりますよね。
これによって、100万円の投資で300万円の運用ができる。こういった仕組みをレバレッジといっています。つまり、投資金額に対して3倍のスピードで運用できることになるわけです。
ただデメリットとして、借入ですから利息の支払いが発生することがあります。
また、この借り入れを含めた300万円で運用している間に、もし投資元本と同じ100万円の損失が発生することとなった場合には、借入200万円全額の返済を迫られることがあります。つまり強制的に運用が停止されるわけです。
貸している方からしたら、それ以上の損失となると返してもらえなくなるリスクがあるから当然といえば当然ですよね。
ちなみにこのような仕組みをFXなどでは『ロスカット』と表現しています。
『グローバル3倍3分法ファンド』とは、リスク軽減のバランスファンドに、リスクも高いがリターンも大きくなるレバレッジをかけた投資信託です。
バランスファンドにレバレッジをかけるメリットは?
一言でいえば、この投資信託はレバレッジを3倍にしているので、リターンはレバレッジをかけない時よりも、約3倍のリターンを生み出すことが期待できるのですが、何よりも、レバレッジをかける対象をバランスファンドとしているため、リスクがそれほど大きくなっていないという点がポイントです。
つまり、リスクとリターンのバランスが良くなっているというわけです。
具体的には、運用会社の説明では、レバレッジをかけていない株式単独への投資よりもリスクが低くいのに、リターンはレバレッジをかけることで、レバレッジをかけていない株式単独に投資をするよりもリターンが上になるということのようです。
これが本当であれば、なぜ今までこのような商品がなかったんだ?と思えるぐらい画期的な商品ではないかと思ってしまうほどです。
なぜレバレッジなしの株式単独よりも高いリターンを得ながら、リスクは小さく抑えられるのでしょうか?
この理由は、ポートフォリオ理論において、バランスファンドのリターンというのは単純に加算と倍数で計算できるけど、リスクはそうではなく、加算と倍数よりも小さくすることができるというところにポイントがあると思われます。
例えるなら、株式のリターン7%、債券のリターン3%、不動産のリターン5%と想定すると。
株式、債券、不動産に均等に投資したバランスファンドの場合。
このバランスファンドのリターンは、(7%+3%+5%)/3=5%と計算できます。
しかし、株式のリスクが10%、債券のリスクが5%、不動産のリスクが7%(リスクとは、資産価格の値動き大きさを指します。)の場合に、リターンの計算と同じ(10%+5%+7%)/3= という計算式ではないというわけです。
バランスファンドのリスクを計算する時には、株式や債券、債券と不動産、株式と不動産といった資産間の値動きの相関(同じ方向へ値が動く可能性)を考慮に入れることになります。
例えば、先にも説明しましたが、株式と債券は逆に動く傾向がみられるため、株式と債券を同時に保有することで、お互いの値動きを相殺しあい、リスクが抑えられる可能性があるというわけです。
ちなみに、この『グローバル3倍3分法ファンド』の資産構成は株式20%、不動産10%、その他が債券となっています。
つまり、実際に投資する額の90%((20%+10%)×3)が、株式と不動産という高収益が期待でき資産へ投資しているようなものだといういうことです。
どういうことかというと、100万円をこの投資信託に預けた場合というのは、60万円の株式と30万円の不動産に投資場合と同じリターンとなるということを意味します。ざっくりいえば、株式投資信託(不動産も含む)に投資したのとほとんど同じ運用リターンが狙えるということもできるわけです。
しかし、レバレッジ効果で含ませている債券によって、株式と不動産に投資するよりもリスクを軽減することを期待しているというわけですね。
『グローバル3倍3分法ファンド』の留意点。
まず、投資信託を使う場合には、長い運用実績を見て投資をするべきという基本があります。
コンセプトや運用方法がいくら素晴らしいと思っても、その投資信託が本当にいいものであるかどうかは、やはり実績を見てみないと判断できないという視点は必ず持っていた方が確実です。
この投資信託のコンセプトは面白いですが、設定が2018年10⽉4⽇とまだ1年もたっていない新しい投資信託です。完全に信用するには実績が少なすぎる点が問題だと思われます。
それと、レバレッジを使っているということは、支払利息のようなコストが発生しているという点があります。レバレッジ型の投資信託は、上昇と下落を繰り返すもみ合い相場では、レバレッジをかけていない実際の資産よりもそれらのコスト発生によって、損失が増えるというデメリットがあります。このデメリットは、たとえこの『グローバル3倍3分法ファンド』であっても同じと思われます。
次に、ポートフォリオ理論はどこまで通用するのかという問題です。
リーマンショックなどの金融危機が起こった時には、株式や債券の相関が崩れ、株も債券も一緒に下落したということがありました。このように、株、債券、不動産、すべてが下落するような異常事態が起こった時に、この『グローバル3倍3分法ファンド』の仕組みがどこまで機能するのかがわかりません。
今のようなポートフォリオ運用がうまく機能する環境であれば、うまく運用できていたことも金融危機などの異常事態になったとたん、まったく通用しなくなってしまったという話は良く聞く話です。
その最たる例として『LTCM破たん』は特に有名ですよね。
もし今一番危惧する点があるとすれば、そこかもしれません。
今この投資信託は、設定以来大きく投資金額が増えているそうです。
つまり、世界中で投資利回りが低下している環境で、より大きな収益を求めるために、レバレッジを活用しようとしている人が増えているためであったとしたら?
レバレッジをつかって半強引に利回りを上げようとするのは、金融サイクルの後半によくみられる現象といわれています。
いくらポートフォリオ理論や分散投資とは言え、レバレッジをかけているという事実に変わりはありません。サイクルの一番最悪な時にレバレッジをかけていれば、当然大きなダメージを負うことになると思われます。
この『グローバル3倍3分法ファンド』に興味を持ち、いろんな金融機関が商品開発し、今後似たような仕組みを持つ投資信託の設定が増えてくるようだと、少し警戒したほうがいいのかもしれないと思わなくもありません。
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