資産運用の最適解はあるのだろうか?
今年1月に亡くなったジョン・ボーグルが書いた遺作ともいえる本です。
ジョン・ボーグルは、資産運用会社のバンガードを創設した人です。バンガードは、低コストのインデックスファンドを運用していることに特徴がある運用会社です。
この本を読むと、バンガードという会社の目的や目標も感じられる。そのような内容になっています。
資産運用の最適解はインデックスファンドにあるというのが、ジョン・ボーグルの主張です。
個人的には、インデックスファンドが最善というわけでもない気もしていますが、それでもインデックスファンドが資産運用の選択肢の上位であることは間違いなく、他の資産運用方法よりも優位な立ち位置にあることも間違いないと思っています。
つまり、インデックスファンドは最善とは言い切れないかもしれないけど、最適解であるといえると思います。
ちなみに、ジョン・ボーグルの意見としては、インデックスファンドは最善の運用方法だと考えているようです。
この本を読むと、そのことを否定できない気持ちになります。
数々の著名な投資家、投資アドバイザー、評論家といった人たちもそのことを認めている。
ジョン・ボーグルは、本書の中でもたびたび出てきますが、資産運用業界の中で最も偉大な人物の一人だということは、間違いないでしょうね。
インデックスファンドの優位性?
インデックスファンドがなぜ、バフェットなどの著名投資家も認める資産運用法として認知されているのか?
バフェットは、自分が亡くなった後の遺産をバンガードの低コストのインデックスファンドで運用するようにと言っています。
また、ヘッジファンドとインデックスファンドで、どちらの方が長期的パフォーマンスが優っているかの賭けをしたときにも、インデックスファンドに賭け、勝利したという話もあります。
インデックスファンドの優位性とはなんなのか?詳しくはこの本を読んでみてもらいたいところですが。
ジョン・ボーグルは、市場全体に投資する時価総額加重平均型のファンドをインデックスファンドとしているようです。
つまり、日経平均225よりもTOPIX、NYダウよりも、S&P500に連動するようなファンドの方がボーグルが考えるインデックスファンドに近いというわけですね。
時価総額加重平均型を勧めるのは、銘柄入れ替えやリバランスなど度々売買する必要がないという点が大きいようです。つまりは、コストを最小限まで削減できるということです。
この本を読んでとにかく感じされられるのは、資産運用では徹底的に運用に係るコストを下げること、それがもっとも効率的で運用のパフォーマンスをよくする方法というわけです。そして、十分な分散投資をする。
その行きついた先が、インデックスファンドということです。
この話に疑いの余地はありません。
資産運用の基本には、「とことんコストを減らすこと。」「効果的な分散投資をすること。」があることは誰もが認めるところだと思います。
株式市場つまり米国中の企業が稼いだ利益が、そのまま株価に反映されている。つまり、株式市場全体の株式を保有するということは、米国中の企業の利益を投資家が手にすることと同じ。
しかし、運用会社や仲介業者などに手数料を支払うことによって、その利益の一部が運用会社などに流れてしまうことによって、投資家が米国中の企業の利益をそのまま受け取ることができなくなっている。
つまり、株式投資家が本来手にすることができるはずの利益が、運用会社や投資アドバイザーなどを雇うことによって、失われることになる。
だから、コストを下げることがとても大切だというわけです。
複数のアセットに分散して投資するファンドはいただけない?
バランスファンドと言って、株式や債券、REIT(不動産)、金(ゴールド)などなどいろんな資産に分散して投資するファンドがあります。
ポートフォリオ理論といって、ノーベル賞を受賞した金融理論を使って、資産配分を考え、低リスクでありながら、それなりのリターンも得られる投資方法というのがその利点です。
最近ではファンドラップやロボアドバイザーなど、資産配分を数学的に分析してポートフォリオを作るというサービスも出てきています。
しかし、複雑な金融商品を作って高い手数料を取られたのでは意味がないというのが、ボーグルの教えです。
本書の中で出てくる、アセットアロケーションの例では、株式と債券だけのポートフォリオが紹介されています。
株式と債券を何対何のほぼ固定した割合で保有するポートフォリオでも十分だという考え方です。
確かにその通り、実務的には、運用戦略はシンプルにする方が実行しやすいためお勧めです。特に日中投資ではなく他の仕事をしている人ならばなおのことです。
つまりは、株と債券の2種類のアセットだけでリスク許容量に合わせて株式の保有割合を変更しポートフォリオを作るという方法というわけです。
ポートフォリオを作った時の金融資産のリスクの大部分は株式資産になります。
つまりポートフォリオのリスクをコントロールするならば、株式の割合をどのくらいにするかさえ押さえておけばある程度価格変動のリスクのコンロトールができるわけです。
ということは価格変動のリスクコントロールは、いろんな資産を組み合わせなくてもできるというわけです。
それに、複雑なポートフォリオを作ることで高い手数料を取られては本末転倒というのは、まさにその通りだと思いました。
ボーグルは、複雑なポートフォリオは、金融機関がそれらしい手数料を取るために行っているのではないかという指摘を本書の中でしていました。
複雑なポートフォリオを作るために、高い手数料を取られていては本末転倒というのは、
A:株式と債券だけで、資産配分を固定した簡単なポートフォリオのファンドのコストが、年間0.3%。
B:株や債券以外にもREITやコモディティなどへの投資を行い、投資環境に合わせて資産配分を見直すという複雑なポートフォリオを使ったファンドのコストが、年間1.5%。
この違い分かりますか?
AとBとの間には、1.2%のコスト差があります。
これはつまり、BがA以上のパフォーマンスを上げるためには、
①Bはその複雑なポートフォリオ戦略をとることで、Aよりも1.2%以上のリスクを減らし。
②かつ、BはAよりも1.5%以上リターンを上げなければいけない。
この①と②を同時に実行することができなければ、BはAに勝てないというわけです。
これは、非常に大きな課題です。1%の差でさえ大きな差になってくる感じがします。
つまりは、複雑で高度な運用をコストをかけて行うよりも、シンプルな運用にしてコストを少なくし、その分株式保有比率を引き下げたリスクが低いポートフォリオにした方がいいということになるわけです。
「お見事です!」
考えてみれば当然の話です。しかしこんなことを考えている人はほとんどいないのではないでしょうか?
最近はやりのロボアドバイザーをとってもそうです。
本書の中でもロボアドバイザーの紹介がありました、ボーグルはロボアドバイザーを投資助言分野でこれから大きく地位を築く可能性があるとみているようです。
ただ、米国のロボアドバイザーは、0.25%程度という低コストで行っているというコストの低さがあるためであり、日本で今盛んにおこなわれているロボアドバイザーとは少し状況が違います。
日本のロボアドバイザーは、運用に係る手数料を年間1%近く取っていますから、先ほどのポートフォリオAとBのようなことになる可能性は否定できないでしょう。
インデックスファンドを世に広めたジョン・ボーグルはすごい!
結局なんだかんだ言っても、資産運用はインデックスファンドに戻っていく。
有名な経済学者ケインズも、アクティブ運用から徐々にパッシブ運用に代わっていきました。バフェットも、遺産はインデックスファンドで運用することを望んでいます。
その他金融機関のCEOなど、博識と思われる人たちも、自分の資産はアクティブ運用などせずインデックスファンドで保有しているという話も出ています。
どうやら、資産運用の基本はインデックスファンドにあるようです。
インデックスファンドのすごいところは、たとえどんな状況であっても、バブル中であっても、バブル崩壊中であっても、確実に平均値でいられるというところです。
もし平均以上を目指すようなことをすれば、逆に平均以下になる可能性を高めることになる。というのが、金融市場なのだということを、この本を読んで改めて思い起こされました。
改めてインデックスファンドの存在感を感じさせられた次第です。
結局のところ、ジョン・ボーグルの考えに否定できるところはほとんどない。本書に書いてあることは、そのまま受け取れば、それでいいということですね。
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