ポートフォリオ運用ではなく、株式を中心としたパッシブ運用。『マイインデックス投資』が一番だと思うようになり、中でもバリュー投資というスタイルが最もパフォーマンスがいいと考えました。
しかし、バリュー投資家を目指したのはいいけれど、バリュー投資の基本となる割安株の見分け方に、またトラップが仕掛けられていたようです。
『マイインデックス投資』ってどういうこと?
リーマンショックというかけがえのない経験によって、ポートフォリオ運用というノーベル賞を受賞した”素晴らしい”とされている運用法にも問題があると、実際に投資をしながら肌で感じました。
そして、たどり着いたのが、自分でインデックスファンドのような運用をするパッシブ運用が最も効率がいいのではないかという考え方でした。
パッシブ運用とは、プラスαを狙う投資戦略ではなく、市場平均に近いような成績になることを考えて運用するという考え方です。
パッシブ運用の最たる例が、”インデックスファンド”ということになります。
あの世界的に有名な経済学者、ジョン・メイナード・ケインズも投資を始めた当初はアクティブ運用でしたが、いろんな失敗や成功の経験を積むにつれて、最終的にたどり着いたのは、パッシブ運用だったという話もあります。
パッシブ運用、つまり”そこそこのリターンで満足しろ”ということですが、それが最も資産を育てる効果的な方法だと、本を読んだり、実際に投資をして経験を積んだりしてきたなかで、感じとってきたわけです。
そんなパッシブ運用の中でも、バリュー銘柄だけに投資するというバリュー投資がいろんな著名な株式投資関連の本で推奨されているのを感じました。
株式投資の世界では超有名なウォーレン・バフェットもバリュー投資だという話です。
そこで、マイインデックスとして採用するのは、バリュー株を中心にポートフォリオを作ろうと考えたわけです。
バリュー投資の考え方?
バリュー投資をしようと考え、割安な銘柄を探そうと調べました。
割安な銘柄って何なのか?
よく聞くのが、低PBRとか低PERというやつです。
この二つは、企業の業績や財務内容に比べて、株価が低い位置にあるのか、それとも高い位置にあるのかを見る投資指標です。
PBRは、株価と財務内容、特に企業の財産の中で株主の持ち分とも言われる”株主資本”と株価の関係性を見たものです。
PBRが1倍以下になっているということは、その企業の株主資本よりも株価が安く取引されているということを意味します。つまり、PBRが低ければ低いほど、その株価は割安だと表現できるわけです。
同様に、PERも低ければ低いほど割安だといえるのですが、こちらは財務内容ではなく、企業業績、特にその企業の利益が反映されています。
企業が稼ぐ利益に対して、株価がどのくらいの水準にあるのかということを意味ているわけです。
一般的によく言われているバリュー投資とは、主にこの2つの指標を用いて株価の割安度の目安としているわけです。
この2つの株価の割安度を測る指標として、PERは特に注意が必要です。
よく、株価が上昇している強気相場の時期に、現在の株価はPERで見ると割安なので、まだまだ強気相場は終わらないなどとマスコミやエコノミストといった人たちが表現することがあります。
バリュー投資を学び始めた時に、まさにこの言葉に引っかかってしまったことを思い出します。
PERというのは、先にも説明した通り、企業の業績から株価の水準を見る指標です。
ということは、「業績が悪くなったらどうなるのか?」というトラップが仕掛けられています。
企業の利益が100円出ていた時に株価が1,000円ならば、PERは10倍となり、割安と表現できます。
ですが、突然その企業の経営環境が悪化し、利益が10円になってしまったら?
その時の株価が同じ1,000円だったとすると、株価は変わっていないのに、突然PERが100倍に跳ね上がることになり、割安から割高に変身してしまいます。
これが、バリュートラップ!
実は、本田技研工業(ホンダ)という自動車を作っている会社の株式を買っていたことがあるのですが、リーマンショックの前までは割安といえるPERだったのですが、リーマンショックが起こり企業の業績が悪化すると、状況は一変しました。
本田技研工業(ホンダ)の株価は、大きく下落しているのに、PERは割高な水準となっていたのです。
割安な株価が下落すれば、さらに割安になるはずと考えがちですが、業績の悪化がそれ以上であったため、PERは割高になるということになったのです。
自動車会社のような景気変動に企業業績が大きく左右される、景気敏感株と呼ばれるセクターは、景気のいい時はPERが割安になり、景気が悪くなるとPERが割高になるという傾向があります。
つまり、景気のいい時に、割安に見えるPERに手を出すと、景気が悪化した時に痛い目を見ることになりかねないということです。
PERは割安を調べるための指標としては使えない。割高になっていないかどうかを知る程度の指標だと実感した出来事でした。
そもそも、PERやPBRで割安かどうかを調べたところで、株式市場が効率的な市場なのであれば、その割安なことには、それなりの意味があるのであり、それだけで割安だなんて判断できるわけなかったのです。
それなりの意味とは、これから景気が悪化し、業績が悪くなることを見込んでいる。事業の不調により、そのうち業績は赤字に転落し、割安に見える数字も今だけだと考えらえているなどです。
株式市場は、かなり効率的な市場だと感じています。(ときどき間違えることもあるとも思っています。)
つまり、PERやPBRといった簡単な指標だけで判断しようなんて、そんな単純な考え方でバリュー投資をしようなんて甘かったわけです。
バリュー投資の考え方の基本を理解していなかった?
バリュー投資とは、何を目的として行われているのか、それをよく理解もせずに、ただ割安というだけで買ってはいけないということを学びました。
バリュー投資が何のために行われているのか、それを理解する手助けをしてくれるのが、ウォーレン・バフェットの師匠であり、バリュー投資の父ともいわれる”ベンジャミン・グレアム”が著した「賢明なる投資家」という本にありました。
割安株投資は、『安全域』という考え方のもとに選択されているということでした。
安全域とは、あまり株式投資で使われていることが少ない表現の仕方ではありますが、要は、リスクが限定的、つまり下落リスクがすくない企業の株式に投資をすることだと考えました。
例えば、すでに株価が20%下落している銘柄が、あとどこまで下落するのか?
と考えた場合、まだ下落が始まっていない上昇基調の銘柄と比較すれば、下落余地は小さいかもしれないと考えることもできそうです。
だからすでに株価が低い水準にある割安株を買うというバリュー投資に意味があるんだなと思うわけです。
そうすると、バフェットの『事業に大きな堀がある会社を好む』というのも、なんとなく理解できてきます。
大きな堀がある会社というのは、簡単に言えば競争相手がいないほどのブランド力、市場占有力をもっているということです。
こういう会社というのは、景気が悪化しても、それほど業績は落ちない。もしくは、経営環境が良くなれば、また以前のように高収益の企業に戻ることがわかっている企業だと考えられます。
つまり、業績予測が立てやすく、現在の株価が割安かどうか、安全域はどのくらいになっているかを判断しやすい企業だといえるわけです。
割安株に投資をするバリュー投資の神髄は、もしかするとここにあるのかもしれないと思いました。
とにかく、高い潜在リターンを持ちながら、株価の下落リスクが小さい企業を探す。
これがバリュー投資のポイントなのかもしれないと気づきました。
どうやらバリュー投資というのは、攻めの投資ではなく、守り発想で行う投資法だったようです。
そう考えると、割安株に投資する方法とは?となった時に。
『景気が悪化し、株式相場が総悲観状態になるとき』この時に、どれだけ多くの株式を買うことができるかどうかが重要なのだと思ったわけです。
こういう時というのは、優良企業も何もかもリスク資産というだけで売り込まれることになるということをリーマンショックを経て学ぶことができました。
まさに効率的な市場が、効率ではなくなる時です。
この時がバリュー投資家が最大の力を発揮べき時なのだと気づきました。
そしてこの時、相場や景気などがいい時と悪い時を繰り返すという、『サイクル』という考え方の重要さに気が付いたわけです。
㈱あせっとびるだーず 代表取締役、CFP 田仲幹生
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