ポートフォリオ理論に何となく疑問を持つようになった?

ノーベル賞を受賞した投資戦略。リターンをできるだけ下げず、リスクを抑えることができるというすごい方法。

という話だけれど、どうも実際の現場ではいまいち機能していないんじゃないか?と思うようになった。

ノーベル賞を受賞するほどの投資戦略と言われると、それはすごい投資戦略だぞと思ってします。

ましてや、ろくに投資の経験値も積んでいない投資を始めたころに、そんな話を聞けば、なおさらポートフォリオ信者になってしまうことでしょう。

例えば、リスク許容度に合わせて自動で資産配分の決定からリバランスまで行ってくれるロボアドバイザーサービスの『ウェルスナビ』では、次のように表現しています。

『ノーベル賞受賞者の理論がベース

ノーベル賞受賞者が提唱する理論に基づいた金融アルゴリズムで、お客様一人ひとりに合ったポートフォリオ(資産の組み合わせ)を自動で組み、リスクを抑えながらリターンの最大化を目指します。』

投資の素人でなくても、「なんか良さそうだぞ」と思ってしまいそうです。

私も投資を始めた初期のころ、投資信託を主に利用していた時に、当時読んでいた本でポートフォリオ理論を知ったときには、すごい方法を見つけてしまったと思ったものです。

現代ポートフォリオ理論とは何なのか?

『ノーベル賞を受賞した!』という言葉には、強烈な破壊力があります。

信用力、信頼性、そしてものすごく賢い人が考えたもの、という印象があるため、これ以上のものはないとさえ思ってしまう力がありますよね。

ですが、ノーベル賞は少なくとの金融の世界では万能ではないことはすでに悲惨な結果をもって証明されています。

『LTCM破綻』という言葉は聞いたことがありますか? LTCMとは、ロング・ターム・キャピタル・マネジメントといってノーベル賞受賞者などが集まって運用チームを作ったヘッジファンドでした。

運用方法は、高度な金融工学理論を駆使したもの、つまり現代ポートフォリオ理論も含め、統計的、数学的に考え、最善と思われる手法を駆使していたというものでした。

「なんという夢のようなファンドなのでしょう!」

と思うことでしょう。ですが、このヘッジファンドは、1997年に発生したアジア通貨危機と、その煽りを受けて1998年に発生したロシア財政危機によって、たった5年程度で幕を閉じることとなったのです。

「ノーベル賞を受賞した」この言葉にはとてつもない力を感じますが、株式市場などのマーケットの中では、たとえノーベル賞であっても、高度な数学的方法でも通用しないことがあるということを考えさせられる話です。

ポートフォリオ理論もLTCMと同じ結果をたどることになるとは考えてはいませんが、必要以上に信用することは無用だということです。

では、ポートフォリオ理論とはどういったものなのか?

ポートフォリオ理論のポイントは、値動きの違う資産を組み合わせることでリターンを減らすことなく、リスクを抑えられるという考え方です。

わかりやすい例を考えるとしたら、あくまで現実としてはあり得ない例になりますが。

①資産A 期待リターン 7%、値動きの大きさ 10%

②資産B 期待リターン 7%、値動きの大きさ 10%

この資産Aと資産Bを半分づつ所有した場合に、どんな値動きをすることになるかと考えた場合。

AもBも、リターンは7%、値動き大きさは10%ということは、AとBを組みわせたポートフォリオCは、AやBと同じく、期待リターン7%、値動きの大きさ10%になるのかというとそうではありません。

なぜならば、AとBの値動きには、たとえ値動きの大きさが同じであっても、上昇するときと下落するときが一緒ではない時があるからです。

もし仮に、AとBの値動きが全く正反対になっていたとしたら、たとえば、Aが上がるとBが下がる。Aが下がると、Bが上がる。となっていた場合。

この場合、AとBは、互いに値動きを相殺しあうことになるため、AとBを半分づつ所有したポートフォリオCは、AとBの値動きを相殺する動きによって、まっすぐ右肩上がりに、期待リターンの7%で上昇していくことになるわけです。

実際にはこんな単純ではありませんが、ポートフォリオ理論を簡単に説明するとすればこんな感じなります。

期待リターンは高いけれど、値動きの違うもの同士を組み合わせることで、期待リターンを下げることなく、値動きのリスクを下げることができるというわけです。

この値動きの違いを相関係数という数字にして算出しています。

相関係数が1に近づくほど、同方向へ動く傾向にあり、‐1に近づくほど、反対方向へ動く傾向があることを意味しています。そして0の場合は、双方の動きには、まったく関係性が見られないということになります。

ポートフォリオ運用のポイントは、リターンが高いものの中から、相関係数が‐1に近い組み合わせを見つけることというわけです。

ですが、実際の運用の現場には、そんな都合のいい組み合わせは基本的にありません。

そのため、ロボアドバイザーのように、過去の値動きなどから統計的に相関係数などを算出して、ポートフォリオの資産の組み合わせを考えるということをやっているわけです。

なんか理屈としてはかなりいい線をいっているように感じます。

しかし、実際の現場ではそううまくいかないことがあるものです。

①相関はいつも同じではない。

②「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」という格言通り、似たようなことは起こるが、過去の話がそのままいつでも通用するというわけでもないという事。

③マーケットに存在する人の心理と感情を、数字に置き換えられるようになるためには、まだまだ難がある。

④マーケットで度々起こる、万が一という事態まで想定して計算することはできていない。

といった問題があるからです。

いくら現代ポートフォリオ理論が、数学的に優れた考え方だとしても、人の心理と感情が渦巻くマーケットでは、通用しないことがあるというわけです。

現代ポートフォリオ理論は、あくまで「数学的には」というものだということです。

リーマンショックにて、ポートフォリオ理論の限界を知った!

私がポートフォリオ理論の限界を肌身に感じて実感したのは、リーマンショックの時でした。

リーマンショックが起きた時、それまではうまく機能していたように思われた相関関係が一気に崩れたのです。このころの金融資産は金と米国債を除いてほとんどのものが大きく値下がりしていました。

このリーマンショックに巻き込まれたことで、金融危機に分散投資は効果がないとさえ言われるようになっていました。

私も、にわかではありましたが、当時ポートフォリオ理論を知って、いろんな資産に分散投資をしていましたが、ことごとく保有資産が下落する目にあい、分散の意味がそもそも違うのだということがよくわかりました。

ポートフォリオ理論は確かに素晴らし理論なのかもしれません、でもだからといって盲目的に信じてしまうことも、また問題があるということをしみじみと感じた次第です。

だからこそ、その理論がどういう理屈でできているかということをきちんと理解して、マーケットを理解して、より多くの知識や経験を積むことでしか、本当の意味で金融商品のリスクをコントロールすべはないのかもしれません。

そして前にも触れましたが、統計や数学でマーケットを見ることで金融商品のリスクはコントロールできるのかもしれないと思っていたわけですが、実はマーケットにある一番のリスクは、マーケットの中の人の心理と感情にあるのかもしれないと考えるようになったわけです。

正直一番厄介な問題が見つかったのかなという感じです。

数字にできないということは、客観的に把握することが非常に難しいことを意味するし、そして、そのマーケットの心理と感情には、自分自身の心理と感情も常に影響を受けているという事実。

投資を前向きに取り組むことで、このようにが次々と新しい見解が見つかり、そして新しい世界が広がっていく感じは、とても面白いです。

人の知りたいという欲求をどこまでも与えてくれる。マーケットってホント面白いものです。


㈱あせっとびるだーず 代表取締役、CFP 田仲幹生

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