バリュー平均法という投資手法について書かれた数少ない本の一つ
ドルコスト平均法は知っているけれど、バリュー平均法は知らないという人、結構いるのではないでしょうか?
ドルコスト平均法とは、よくNISAやiDeCoなどで目にする『積立投資』の基本戦略になっています。
「毎月25日に、30,000円で投資信託を買う。」といったような、定期的に同じ金額で積み立てする方法をドルコスト平均法と言います。
このドルコスト平均法は、相場が下げているときには、口数を多く購入することができるため、リスクに強く、下落局面からの回復期では損失を取り戻すのが早くなることが大きなメリットです。
また、毎月買い付けるという単純なシステムなので、実行もしやすいという所も魅力的です。
しかし、その反面、相場が高い時にも、相場が弱い時と同じ金額で買い続けることになるため、不必要に高値掴みしてしまうというデメリットもあります。
相場で儲けるためには、『安く買って、高く売る』ということが必須になります。また、それこそが相場で儲けるための原理原則にもなっています。
短期投資だろうと、長期投資だろうと、買った時よりも売るときが高くなっていなければ、決して儲かることはありません。
そのため、高い時も安い時も同じ金額で買うということに、疑問を感じている人もいるようです。
そんな中で知ったのが、『バリュー平均法』という投資戦略です。
私は、この本と出合ったことで、この『バリュー平均法』という着眼点を得ることができました。
実は、この『バリュー平均法』について解説している本は、あまり見かけることがありません。本書はそんなバリュー平均法を詳しく解説した、希少な本だと思っています。
バリュー平均法ってなんだ?
バリュー平均法とは、アメリカの学者、マイケル・エデルソンが提唱した投資戦略です。
要は、相場に関係なく毎月一定額を買いつけるドルコスト平均法に対して、相場が高い時と相場が低い時とで、売買に強弱をつける投資戦略になります。
実際には、相場が設定価格よりも高くなれば売却し、設定価格よりも低くなればより多く買うことをします。
つまりは、高値で売って、安値で買う、を機械的に実行するというイメージになってきます。
このバリュー平均法、いろんな相場でシミュレーションしてみた結果、ほとんどの場面でドルコスト平均法よりもすぐれていたという調査結果があるようです。当然そのことについても本書の中で解説しています。
一方的に買い付けるドルコスト平均法に対して、売ることもあるという柔軟性の高い投資戦略のため、ドルコスト平均法よりもいいパフォーマンスになることが期待できる投資戦略ではありますが、その「柔軟性」というのが、実践するとなるとなかなか厄介になっています。
そのため、バリュー平均法という投資法はあまり脚光を浴びることがなく、また実践する人も少ないようです。
例えば、「売ると買うを判断する基準はどうやって設定したらいいのだろうか?」などは、バリュー平均法を実行するにあたり問題となることの最たる例です。
そんな問題点に対して、具体的な例を提示していているのが、本書「3%シグナル投資法」です。
利益追求型の成長資産と、リスクがほとんどない安全資産でポートフォリオを作り、そのうち成長資産の増加率が、四半期で3%を超えれば売り、3%を下回れば買い、というシステム。
シンプルさという点で、バリュー平均法を実行しやすくしてきました。
しかし、実際に実践してきたわけではないので何とも言えませんが、おそらくこの方法は、ここ十年ぐらいの間は不利だったのではないかと想像しています。
というのも、バリュー平均法では値が上がると売ってしまうため、上昇が長く続く期間では、その上昇によるリターンを減らすことになります。つまり、ここ十年ぐらい長く続いた上昇相場では、買い一辺倒のドルコスト平均法に負けていた可能性が高いわけです。
実際、この本が発売されたのは2016年で、本の中の検証期間は、2000年から2015年ぐらいの期間。その期間の時代背景といえばITバブルからリーマンショック、そしてその回復期という時期。
今の長期上昇相場とは、違った相場環境だったことが想像できます。
「大化け株とレバレッジで勝つケリー流株式投資法」でもそうでしたが、本書の著者ジェイソン・ケリーの詰めの甘いところですね。
しかし、それでもその厳しい期間にドルコスト平均法よりもパフォーマンスを上げられたというのは、バリュー平均法にとっては大きいことなのかもしれない。
昨今、株式相場にとってはあまり好ましくないニュースが続いています。相場環境もこれまでと違って、少し厳しい状況が続いています。
もしかすると、このような時期では、ドルコスト平均法よりも、バリュー平均法的アプローチの方が正しいのかもしれません。
バリュー平均法という投資手法に興味がわいた方には、本書はおすすめの一冊になるのではないかと思っています。
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