「暴落相場の時こそ、分散投資と長期投資、そして積立投資を行いましょう!」
といった話を見かけるようになってきました。
確かに、その通りだと言える半面、実はこの話を単純に信用するのは、少し注意が必要だとも思っています。
暴落相場で分散投資を行うのは、例えば株式相場の暴落時に、他の資産への投資も同時に行うことで株式相場の暴落ショックから資産全体の目減りを和らげられる効果があると考えられています。
確かにその通りではあるのですが。
それと、暴落時にも長期投資を行うことは、一時的に大きく資産が目減りすることになっても、長い目で見ればいつか取り返せる可能性が高いので、短期的な値動きに左右されず、長期的な視点で資産運用を行いましょうという事です。
100年に一度の金融危機とも言われたリーマンショックの時に大きな損害となった人も、それから今まで約10年間あきらめずに資産運用を行っていた人のほとんどがそれなりのプラスとなっていることからも真実であるように思います。
そして、積立投資を行うことで暴落時にもコツコツと資産を買っていく事も、決して間違ってはいません。
ただ、これらの投資が上手くいくというポイントを抑えておくことも必要かと思います。
まず、分散投資ですが、確かに株式だけに投資する投資信託に投資ををした場合を考えると、各資産に分散して投資をする投資信託に投資をしたほうのが、株式相場が暴落した時に下落幅は小さかったという事実はありますが。
分散投資の考え方は、レイ・ダリオのいう、「どんな相場が来ても、どれかの資産クラスはいい成績を上げる」という考え方で取り組んだ方がいいという実感があります。
例えばリーマンショックの時は株式や債券、外貨など一般的な投資先はどれも下落していましたが、金がそこそこ好調だったということがありました。
また、最近の株価急落では、株価暴落と騒がれる中、VIX(ボラリティインデックス)が急上昇し、VIXへ損失覚悟で投資をしていた人の中には大きな利益を手にした人もいたという話もありました。
つまり、金融ショックなどの株価や債券といった一般的な金融資産のほとんどが急落していくような局面でも、中には上昇している資産もあるという一つの例で、そういうところへの投資も多少含ませているといいですよという事が分散投資の本当のポイントであると考えています。
ただ単純に分散すればいいというわけではないってことですね。
それと長期投資ですが、長期投資と言葉でいうことは簡単ですが、実践するのはそれほど簡単ではないところがあります。
リーマンショックの時に損失を負った人が、その損失を取り戻すのに、何年かかっているとおもいますか?おそらくほとんどのケースで5年以上の月日はかかっていることと思います。
つまり、長期投資をしていれば大丈夫だと言っても、5年以上の期間にわたって、損失が出ていることを受け入れ続けなければいけないという事を意味しているわけです。
そこまで根気強く続けられる人がどれだけいるのでしょうか?というところが、長期投資の問題点です。
5年で済めばいいですが、それ以上の期間になることも十分に考えられます。
下手したら10年ぐらいかかることもあるかもしれません。10年間も「損した」とか「もう取り戻せないかもしれない」といったストレスと戦うことが長期投資との付き合いです。
半面、バフェットやテンプルトンのような暴落時に買うという投資スタンスならば、そこまで長期間の損失ストレスを受けることもないのかもしれません。
長期投資とは、ただ長期間投資、保有するという意味ではなく、暴落も含めて長期間の視点で投資と向き合うというスタンスでいた方が精神的なストレスも少ないと感じています。
最後に、積立投資ですが、積立投資はコツコツと長期にわたって積立てていくことで、平均購入単価を下げる効果があります。
ただこの効果が発揮される場面というのは、暴落なりなんなりで下落相場が続いた後、相場が反転して上昇した時に効果が出るものです。
つまり、いつか上昇する場面が来ないといくら積立投資をしても意味をなさないわけです。
仮に投資先を間違えて、いつまでも低迷したまま戻らないようなところへ投資をしてしまえば、「積立投資は意味ない」という事になるわけです。
長期的には必ず上がっていくことが望める投資先を探すという事が必要なわけです。
単純に積立投資をしていればいいってわけではないってことですね。
『分散投資、長期投資、積立投資をしましょう』というというのは、これらの話を前提として成り立っている公式です。
『分散投資、長期投資、積立投資をしましょう』という公式が、あまりにも便利な公式であるために、これらの前提条件を無視してしまっているようなところも見受けられなくもないので、ちょっとポイントとして今回触れてみました。
『分散投資、長期投資、積立投資をしましょう』は公式ですから、それを行っていて失敗することは、この公式を使っていない人に比べて非常に低いものではあるとは思います。
ですが、『分散投資、長期投資、積立投資をしましょう』という公式を使う時には、この公式の前提条件を意識した使い方をお勧めしたいところです。
逆に言えば、この公式の前提条件を理解していることで、さらに暴落相場でうまく立ち回れるような公式が思いつくこともあるかもしれません。
アインシュタインの言葉を使わせてもらうならば、『ものごとはできるかぎりシンプルにすべきだ。しかし、シンプルすぎてもいけない。』という事なのでしょうね。
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