『ゼロから学ぶモメンタム投資 ──長期的に市場を打ち負かす合理的な方法(アンドレアス・F・クレノー )』

株式投資の戦略的アプローチ決定版?

久しぶりに面白いと思える株式投資の本に出合えたような感覚でした。ほとんど一気に読んでしまいました。

この本は、株式投資をするにあたって、何を選べばいいのか、何をすればいいのかが具体的に提示されていて、しかも、そのやり方がシンプルで簡単そうでもある。

似たような感覚を持った本としては、個人的に株式投資におすすめの本と考えている。

『株デビューする前に知っておくべき「魔法の公式」(ジョエル・グリーンブラット)』『ダウの犬投資法 ──プロにも株価指数にも勝つ「単純」戦略(マイケル・B・オヒギンズ)』に近いです。


投資で必要なのは、ロジックのしっかりした戦略であることと、その戦略をしっかりと理解して、長期的に実践できること。

本書は、そのロジックの部分も、小難しい数式などを使うファイナンス理論などは使わず、わかりやすく説明されているので、とても読みやすい。

しかも、知識量や感性などに頼ることのない、数字だけで導き出せる、誰にでも実行可能な方法でもある。

株式投資の初心者からベテランまで。みんなにおすすめの本だと感じました。


モメンタムというアプローチ。

今の金融やファイナンス理論の中心といえば、効率的市場仮説なのではないでしょうか。

しかし、筆者はこの効率的市場仮説を、古い理論だと切り捨てる。効率的市場仮説とは、ほとんど真逆に位置するモメンタム効果は、実際に市場にあるといっています。

そして、モメンタム効果を否定するようなことを考えるのは無駄だとも言っていました。


モメンタムとは、上昇している株式は、しばらく上昇をつづける傾向があるということを指しています。つまりは、今上昇している株価に影響を与えているのは、前日まで上昇していたという事実によるものというわけです。

率直に言ってしまえば、将来の株価が上がるのか下がるのかを予測することが可能になることになる。

株価を決定づける情報のすべてが、瞬時に株価に反映されており、株価の動きは完全にランダムであり、先を予測することは不可能と考える効率的市場仮説とは、全く異なる考え方です。

モメンタム投資とは、上昇している株式を買って、株式のそのまま上昇し続ける癖を利用してトレードをするということになります。


本書は、モメンタム効果という株式市場の特徴を利用して株式をトレードし、S&P500に勝つための方法を提案しています。


S&P500に勝つのは簡単?

本書の中には、たくさんの気づきがありました。

どれもとても有意義なものでした。その中の一つに、S&P500に勝つのは簡単だという話がありました。

効率的市場仮説論者によれば、S&P500のような時価総額加重平均型のインデックスに連動する投資信託やETFを使って運用することが最善だということでしょう。

しかし、筆者の研究によれば、S&P500に採用されている銘柄をリスクパリティ、つまりはリスクの大小に応じてポートフォリオの配分を変更するだけで、時価総額加重平均型のインデックスのパフォーマンスを上回ることができるといっています。


リスク量(価格変動の大きさ)に合わせて、ポジションを調整するというアプローチには、なるほどという感覚でした。

時価総額加重平均型では、正直バランスが悪いと直感的に思っていました。

株式市場には、小型株効果やバリュー効果があるといわれています。時価総額加重平均型だと、その小型株効果やバリュー効果をほとんど得られない。

だから、ほぼ同じ金額で均等に分散して投資するポートフォリオのほうがいいのではないかと考えていました。

しかし、この方法だとリスクが大きくなりやすいというデメリットもある。そこでリスク量でポジションのサイズを調整するという方法を使うのは、なるほどと思ったわけです。

本書の内容の中でも、実践の中に取り入れたいと考えるものの一つでした。


初心者が株式投資の実践方法を一から学ぶためのものとしても、またすでにある程度株式投資をしてきた人が新たな投資のアプローチのしかたを考えるものとしても、本書はきっと参考になることと思います。


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