『誤解だらけのアセットアロケーション―実務家のためのガイド(ウィリアム・キンロー (著), マーク・クリッツマン (著), デービッド・ターキントン (著))』

アセットアロケーションの常識は的外れ?

資産配分を効率的に行うことで、リスクを抑えながらリターンをできるだけ大きくするという投資理論、現代ポートフォリオ理論。

その現代ポートフォリオ理論を使った投資戦略の肝とも言えるのが資産の配分割合を決める、いわゆる『アセットアロケーション』となります。

その『アセットアロケーション』には、さまざまな常識とも言える知識が言われています。

・資産配分を決めることは、運用パフォーマンスの8割以上を占めている。

・長期投資はリスクを小さくする。

・為替リスクは、できるだけヘッジしたほうがいい。

・投資先は、時価総額加重平均型のインデックスが最適。

などなど。

これらの話は、投資に詳しい資産運用のアドバイザーなどから、多くの人がアドバイスを受けている話だと思われます。

そして、実際にそれらのアドバイスに沿って投資や資産運用を行っている人も少なくないことと思います。


しかし、「実はそうではなかった。」というのを説明しているのが、この本の目的。

アセットアロケーションについては、「今まで常識だと思っていたことが、実は誤解だった」というのが、結構あるようです。


アセットアロケーションで運用するなら抑えておいた方がいい知識?

この本は、最初から最後まで隅々まで読むという読み方よりも、辞書のように気になった時に気になった部分を読むという使う方があっているのかもしれない。

なにより、使っている言葉が難しくて何を言っているのかわかりにくい。

最低限の知識として、現代ポートフォリオ理論はもちろんのこと、金融工学の話で出てくる小難しい単語とその意味ぐらいは抑えておかないと、おそらく読みようがない。

また、言い回しも小難しく、学術書のような書き方のため、はっきり言って、万人には向かない読む人を選ぶ本だと感じました。


ただ、そんな中でも、なんとなくでも知っているといいなと感じる話もありました。

一般的には、「アセットアロケーション(資産の配分)が、資産運用のパフォーマンスを8割以上決定づける。」とよく言われていますが、その話には、理論を語る前提そのものに間違いが見られるそうです。つまりは、この話は根本から間違えている。

実際には、「どれだけリスクを取るのか、つまりは何に投資をするのか。」のほうが影響は大きいと言っています。


また、投資信託を購入するときなどに、「長期で投資をすればリスクは小さくなる。」と説明を受けたという人の話をよく聞きますが。

実際には、「長期投資でリスクが小さくなるということはない」という話もありました。

むしろ、長期投資をすることで、損失となる時期に出会う確率は高くなるといっています。

また、長期投資には、損失の割合(率)が小さくなることがあったとしても、損失額(金額)は長期投資のほうが、大きくなる可能性が高くなると言っています。

それは、投資額の大小によるもので、長期間運用すれば、それだけ投資金額も増えることが多いので、同じ10%の損失でも、100万円なら10万円で済むものが、2,000万円にもなれば、200万円の損失になるということです。


確かにこれらの話は、「言われてみればそうなるよね」というのもわかるような話なのかもしれません。

でも、理論というもっともらしい単語を使われることで、その「言われてみれば」という当たり前の感覚を忘れてしまうこともあるものです。

このように誤解している話を、理論的にまた数式などを用いて、この本では説明しています。


しかし話の内容が、あまりにも理論的なアプローチであるためか、「金融工学に対する根本的な疑問などについては考慮されていないのかな」とは感じました。

そういった点なども考慮しながら本書を読んでみると、案外いい投資アイデアが得られることもあるかもしれません。


0コメント

  • 1000 / 1000