『株デビューする前に知っておくべき「魔法の公式」(ジョエル・グリーンブラット)』

株式投資の魔法の公式?

投資の世界で、『魔法』なんていうと、いかにも怪しいような気もする単語ではあります。

ですが、筆者はヘッジファンドを運用していた経歴も持つ、投資家としても有名なジョエル・グリーンブラッドです。

それだけに、実体験からも基づいた実践的な株式投資のノウハウが書かれているのだろうと言うことは、簡単に想像できます。


この『魔法の公式』、実はとてもシンプル。誰にでも実行可能な、簡単な方法でもあります。

基本的には、バリュー投資という考え方が活かされている公式ではありますが、実践的にも効果的な方法だと個人的にも感じている。

実際、私自身この本の影響をかなり受けている。

この本の『魔法の公式』を全くそのまま実行してきたわけではないけれど、そのエッセンスは今まで利用させてもらってきたと思っています。

その結果、この14、5年決して悪くないパフォーマンスで株式投資ができてきたと感じています。


本書の中でも言っていることですが、シンプルで簡単な方法なのに、実際にこの本の方法をそのまま使っている人はほとんどいない。

人という生き物は、シンプルで簡単なものを求めてはいるくせに、実際には、シンプルになりすぎると、そのシンプルなものをそのまま受け入れることが案外できなかったりする。

不思議なことに、シンプルなものより、小難しいもほど魅力を感じるという、変な癖があるようです。

『魔法の公式』と似たような、シンプルなのにとても効果的と言われている投資法として、『ダウの犬投資法』という有名な投資戦略がありますが、そちらも、そのまま実践している人は少ないことでしょう。

実は、この『ダウの犬投資法』は、この本の『魔法の公式』ととても似ていると感じています。

『魔法の公式』も『ダウの犬』もとてもシンプルで、かなり効果が見込める投資戦略ではあるのですが、シンプルすぎるが故に実践が難しいという、矛盾を含んだ投資法でもあります。


魔法の公式の真髄?

魔法の公式って何?

魔法の公式の実践方法としては、ROAとPERから投資銘柄を選別し、20〜30銘柄に分散投資をするという単純な方法です。

ちなみに、ダウの犬投資法では、NYダウに採用されている30銘柄の中から配当利回りと株価の低いものから5銘柄を選択するという、これまた単純な方法です。

ですが、こんなシンプルな方法で投資銘柄をスクリーニングするだけで、なぜか株式投資のパフォーマンスが上がるという、まさに『魔法』のような話というわけです。


なぜそうなるのかの詳しい説明は、本書を読んでいただきたいところですが。

要約すると、『「資本収益率が高く」、「利回りの高い」』銘柄を探して投資をするということになります。

当然、「資本収益率が高い」だけでも、「利回りが高い」だけでもだめで、両方の条件を満たしたときだけ投資をするということが必要だと言っています。

ROAとPERという条件を設定してスクリーニングしているのは、そのためです。


ちなみに、本書の中で紹介されている『魔法の公式』のパフォーマンスは、ITバブルが弾けた2001年頃のときでも、そのバブル崩壊に巻き込まれることなく、収益をあげていたというのですから驚きの結果です。

1988年から2004年の間にマイナスになったのは、2002年の−4%のみだったそうです。

同年S&P500は、−22.1%でした。さらに言えば、S&P500は、2000年から2001年、2002年と3年連続のマイナスとなっていたようです。

そして、1988年から2004年までの17年間で年間の収益率が平均30.8%という高いパフォーマンスだったそうです。


これほどのパフォーマンスが望める投資戦略なのに、実践する人が少ないのはなぜなのか?しかもその方法も、決して難しいわけでもありません。

実践に向かない、その大きな理由は、私達の『忍耐力』にあります。いい成績が望めると言っても、実際には「うまく行かない年を何年か経験する」ことになる。

実際に、本書の『魔法の公式』が市場平均に負ける年は珍しくなくあるようです。

そのようなときに、私達は『魔法の公式』のようなシンプルで効果的な投資戦略を実践できなくなる。


シンプルすぎるが上に、「もっといい方法が考えられるのではないか?」とよそ見をしてしまう。

「『魔法の公式』は、本当に間違いないのだろうか?」と不安を抱くようになる。

「周りから、時代が変わったから、すでに『魔法の公式』は通用しない」と言われ、『魔法の公式』への信頼が薄らぐ。

実際に株式投資を経験してきた人であれば、皆似たような心の声を感じたことがあるのではないでしょうか?

だからこそ、本書の中でも言っている通り、「理解する」ということがとても重要になってくるのだと思います。

知っているだけではだめ、暗黙的に戦略を採用すれば上手くいくなんて考えるのもだめ、どうして上手くいくのか、うまく行かないときでも、きっと大丈夫と思えるだけの『信念』があるのかどうか、それが『魔法の公式』を実践する人に必要なものになってくるというわけです。


そしてさらに言えば、実際にやってみて、「実感としてこの戦略の有効性」を感じることも必要だと個人的には思っています。

そのために必要な時間は、3年から5年だと本書の中では説明しています。

3年から5年という長い期間、上手くいくかどうかわかっていないことをやり続ける根気がどこまで自分にあるのか?

それが、株式投資でいい成績を収める人と、そうでない人をわける大きな違いなのかもしれません。


実際に、自分で似たような考え方で株式投資を実践し、その結果そこそこにいいパフォーマンスで運用できてきたことからも、この本は本当に役立つ株式投資のバイブルだと感じています。

小難しいものでもなく、理解しやすいように書かれているため、投資初心者であっても十分に読むことができる本ですし、株式投資を始めるなら、一度読んで見ることをおすすめしたいです。


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