しかし、ちょっと見ない間に、国内のETFも充実してきましたね。
少し前に、米国にはロング・ショート戦略を指数としたETFもあるのかと思っていたのですが、国内でも、ロング・ショート戦略を利用したETFが上場していたんですね。
そのロング・ショート戦略を利用したETFが、『上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ(βヘッジ)』です。
そもそもロング・ショート戦略ってなに?
「ロング」とは、「買い」。「ショート」とは「売り」を意味します。
つまり「ロング・ショート」とは、買いと売りの両建てのポジションをもつことを意味しています。
例えば、トヨタという銘柄を買い、保有しながら、日経平均先物の売り建てのポジションを持つ。といったポジションの取り方です。
こういうポートフォリオの作り方の目的は、
選択した個別銘柄が、日経平均など市場平均以上の株価下落を抑えられるものである場合、市場の下落(特に暴落)によるリスクを回避して、個別銘柄が日経平均よりいい部分のリターンだけを享受しようという考え方からきています。
例えば、
日経平均が下落した。トヨタも当然下落した、でもトヨタは業績が良かったので、日経平均よりも下落が抑えられていた。というケースで考えた場合。
仮に、日経平均の下落▼200円、トヨタ▼100円。だったとします。
トヨタは「買い」のポジションなので、▼100円になってしまいました。
しかし、日経平均は「売り」のポジションなので、下落すると逆に利益になることになり、△200円。
(△200円)+(▼100円)=100円のプラス。
相場は下げているのに、ポートフォリオ全体では、プラスのリターンを生み出しているという事になるわけです。
逆に、株式相場全体が上昇しているときは、
日経平均が上昇した。当然トヨタ株も上昇している。またまたトヨタは業績が良かったので、日経平均以上に値上がりした。という場合。
仮に、日経平均の上昇 △100円、トヨタ△200円。だったとします。
トヨタは「買い」のポジションなので、△200円になりました。
しかし、日経平均は「売り」のポジションなので、上昇は損失になるので、▼100円。
(▼100円)+(△200円)=100円のプラス。
本来のトヨタの上昇よりも利益は減ってしまいましたが、相場が上昇しているときも、プラスになるという結果になります。
つまり、相場が下げていても、上げていても、常にプラスの利益になるようにと考え出された戦略(絶対リターンを追求)というわけです。
ちなみに、この戦略をさらに高度に考えたものが、よくヘッジファンドなどで利用されているそうです。
例えば、「売り」のポジションで使う対象を日経平均などの市場平均ではなく、今後株価の下落が見込まれる割高株などを利用するという方法です。
すると、買い銘柄の上昇と、売り銘柄の下落でダブルで利益となることもあり得る上に、相場全体の下落も抑えられるという戦略になってくるわけです。
簡単そうに聞こえなくもないですが、実際にはなかなかハードルが高い投資方法です。
ポイントは、市場平均以上又は今後株価の高い上昇が見込まれるもしくは下落する銘柄を選択していかないと、この戦略は有効に機能しないからです。
そいう銘柄探しが難しいことはご存知の通りです。
ちなみに、日経平均やTOPIXといった市場平均のリスクをβ(ベータ)と言います。
このETFの名前にある「(βヘッジ)」とは、市場平均のリスクをヘッジしているということを意味します。
『上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ(βヘッジ) 』の戦略?
「(βヘッジ)」つまり市場平均のリスクをヘッジするということで、このETFでは、「売り」ポジションはTOPIXの先物等を利用し、市場平均のリスクをなくしているそうです。
販売用資料には、『組入比率 株式85%+現金15%、先物売建 株式85%部分にベータ値を勘案しTOPIX先物等を売建』
つまり、株式投資の部分には市場平均リスクが0になるポジションを作っているという事になっています。
そして「買い」のポジションには、名前にある通り、『MSCI日本株高配当低ボラティリティ』に連動させることを目指しているそうです。
『MSCI日本株高配当低ボラティリティ』またややこしい名前が出てきましたが、要は国内の高配当株式への投資を行っている、かつボラリティが低くなるようにしている。といった感じです。
金融商品の名前は、基本的にその金融商品の機能をつなげて名前がついています。
たとえば、『低解約返戻金型逓増定期保険』という保険商品がありますが、この場合、
『低解約返戻型』⇒解約返戻金が低い、もしくは最初の数年間は低くなっている。
『逓増』⇒保険金額が年々に上昇していくタイプ
『定期』⇒一定の期間だけ保障がある。
といった感じです。
名前の付け方に慣れてくると、ややこしくて長ったらしい名前であっても、その金融商品がどのような商品なのかが名前を見ただけで想像できるようになってきます。
話を戻しますと、高配当、低ボラリティということは、市場全体が下落した場合を想定すると、市場全体よりも下落が抑えられるだろうという事が期待できるわけです。
つまり、高配当、低ボラリティ、βヘッジは、市場全体の下落に強い戦略だという事です。
実際に販売資料を見ると、あのリーマンショックの時でも、この投資戦略を使えば、ほとんど下落することがなく運用できたというデータがでてくるそうです。
それと、リーマンショックの時に限らず、全体として下落らしい下落を見せずに、少しずつ右肩上がりで長期間運用できているというデータもでています。
このETFが下落に強いという事が良くわかります。
ただ、上昇相場には弱いようで、市場全体が上昇している時には、全然相場の上昇についていけていないという感じになっています。
『上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ(βヘッジ) 』は使えるの?
興味のある人はぜひ一度見てみるといいかと思います。
『上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ(βヘッジ) 』
使えるかどうかは、その人のポートフォリオの在り方次第になってくるかと思いますが、非常に興味深いETFだと個人的には思っています。
まず、自分のポートフォリオにロング・ショートという戦略を簡単にかつ低コスト(信託報酬手数料0.486%)で組み込むことができるという点です。
こういうヘッジファンドの戦略は従来の伝統的資産と呼ばれる、株、債券、不動産とは違った値動きをするので、ポートフォリオ全体のリスク軽減に効果があります。
また、暴落のリスクがかなり下がっているのに、期待リターンが約4%もあるというのも、興味深いです。
上昇相場に弱いという大きな弱点がありますが、株式相場がかなり上昇してきてしまって、株式投資をしたいんだけど中々手が出ないなんて時には、意外とちょうどいい選択肢になってくるのかもしれません。
販売資料を見ると、暴落開始前にこのETFの戦略で投資をすると、非常に効果的なんだなということを感じます。
2007年、リーマンショックを引き起こすきっかけとなった、サブプライムショックのあたりから、このETFと同じ戦略で投資をしていた場合、TOPIXを上回る運用成績を残せていたことが販売資料から見ることができます。
それと同時に、暴落を回避するという運用スタイルがこれほど大きな意味を持つのかというのも感じました。
あくまで想像ですが、このETFの戦略を使いつつ、上昇相場に弱いという部分を自分で工夫して補うような運用ができたら、もしかすると。と思わなくもありません。
それと、もう一つ高配当戦略だけあって、分配金が出る回数が多めという点も好印象かもしれません。
このETFの決算月は、1,4,7,10月の年4回で、分配金の分配に関しても年4回の予定だという事です。
ホントETFの世界がどんどん広がっていますね。
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