資産運用の話になると、8割がた登場してくるインフレという言葉。
日本ではデフレと呼ばれる状態が、20年以上続いているとも言われ、インフレと言われてもピンときません。
資産運用をするにあたって、なぜインフレ対策が重要なのでしょうか?
インフレとは物価上昇のこと?
インフレーションを略したものをインフレと呼んでいます。
インフレとは、物の値段が上昇していくことで、例えば昔自動販売機の飲み物の値段は100円だったのに、今は120円とか140円とかに上昇しているような状態のことを言います。(この値段上昇は消費税の影響の方が大きい気がしますが。)
物価が上昇すると、今ある蓄えでは将来同じものが買えなくなることになります。
資産運用をする上でインフレという言葉が必ずと言っていいほど出てくるのは、資産運用の第一目標はインフレによって資産を減らすことがないようにするためであるからです。
インフレによって資産が減ってしまうというのは、例えば今1,000万円の現金預金を持っているが、20年後インフレが進んで、その1,000万円では普通車一台を買う分ぐらいにしかならないということになってしまえば、1,000万円の現預金という資産は価値が減っているということになります。
資産の価値とは、円という単位を基準としたものではなく、物を買う力、購買力で考えるということです。
インフレという言葉を調べると、物価の上昇と説明されていることが多いですが、物価上昇よりも通貨価値の下落と考えた方がわかりやすいかもしれません。
円という単位によって、価値を数字に変換できるので、まるで円という通貨が絶対的価値を持っているような錯覚を持ってしまいますが、実際にはその円の価値も変動しています。
FXや外貨預金などをやっている人ならば、理解しやすいかと思いますが、実際に円がドルなど他の通貨を基準に考えれば常に変動しています。
同様に、物基準でも常に円の価値は変動しています。スーパーなどに買い物に行って、「今日は安いな」とか「なんかいつもより野菜が高いな」といった感覚と似たようなことです。
日本では、長いことデフレが続いているためインフレという実感があまりないかと思いますが、今の年金受給世代では、「若いころに数百万円の終身保険に加入して貯蓄してきたが、今となってはたいしたお金じゃなくなっちゃったな」という人が結構いたりします。
インフレと金本位制
金本位制とは、通貨と金を一定の量で交換すると約束した体制です。つまり、通貨は金という物の価値に裏付けされたものであったのですが。
1971年のニクソンショック(アメリカ)によって、通貨(ドル)と金の交換を停止したため、通貨の価値と金の価値が切り離されることになりました。
それからのドルの価値は金ではなく、アメリカという国、行ってみれば米国債の価値が裏付けとなっていると言えるわけです。
金本位制が終わってから、実は半世紀もたっていないという、意外と今の通貨体制は最近のものだということです。
通貨が金本位制でなくなることで、国は通貨をいくらでも?作ることができるようになりました。不景気が来たらどんどんお金を作れ、ばらまけということをやってきたわけです。
その結果、ニクソンショック以降の株式投資は大きく値上がりをしているわけですが、同時にインフレもずっと続くことになり、通貨(ドル)の価値も下落し続けています。
通貨価値の下落を考慮すれば、ニクソンショック以降の株式投資のリターンも別に特別高リターンだったということでもないそうです。
つまり、今の通貨体制はインフレつまり通貨価値は下落する一方になるのが当たり前ということでしょう。
だからこそ、通貨とほぼ変わらない価値の現預金で貯蓄をすることは、資産を減らすことになってしまうので、資産運用をしないといけないぞということになるわけですね。
日本でもインフレ対策の資産運用が必要?
投資信託について相談したり、外貨建て保険などを検討したりといった時、日本では必ずと言っていいほど、「インフレ対策をした方がいいですよ」という話をしてくるかと思います。
資産運用とインフレ対策は、もう教科書の文言みたいなものです。ですので、投資信託や外貨建て保険を販売する側は、その教科書通りのことを話しているのだと思いますが。
実際日本ではインフレではなくデフレが続いています。そしてその出口も中々見えてこないといった感じです。つまり、アメリカの国に合わせた教科書が日本でも通用するかどうか怪しいところもあるわけです。
もしかすると日本では、資産を守るためという理由から考えれば、インフレになっていないので無理に資産運用をしなくても十分という可能性もあります。
営業員のインフレという言葉に脅されることなく冷静に考える必要もあるのかもしませんね。
投資戦略のトレンドフォロー的発想によれば、インフレが来るのを確認してから、現預金から他の資産へ移すことを考えればいいわけなのですが、デフレが続いている今から金融機関の営業の人にインフレが来るから今のうちから準備したほうがいいですよなどと言われ、投資信託を買ったり外貨建て保険に加入する行為は、逆張り的な発想になります。
つまり、自分が逆張り的な投資戦略から、インフレ対策をしているという自覚を持つことが必要なのでないかと感じています。販売する側もインフレ対策という言葉で販売するならば、この戦略の発想は逆張りからきていますということを説明するべきなのかもしれません。
逆張りという投資戦略が悪いわけではなないですが、逆張りはいつ反転するかわからないものをいつまでも待ち続けなければいけないという我慢大会です。
つまり我慢が苦手な人や、他人の意見に左右される傾向が強い人には向いていない投資戦略です。そして逆転するまで投資し続けるという長期投資を前提とした投資戦略です。
私も生命保険の営業をしていた経験があるのでなんとなく感じることですが、金融機関の人間は、人に商品を売るとき、感情をあおって売ってきます。そして、人が一番動かされる感情は、恐怖と不安です。
投資で資産を築くためには、むしろ恐怖や不安という感情、つまりリスクをうまくコントロールする力が重要であったりすると感じています。
あえてインフレ対策をするのであれば。
インフレ対策としての資産運用をするのであれば、インフレに強い金融資産は、株式です。データの上では、債券や金などのコモディティ投資ではインフレに負けるといった話があります。数ある金融資産の中でインフレ以上のリターンを挙げたのは株式ぐらいだそうです。
つまりインフレに負けないためには、株式を中心に運用計画を立てる必要があると思われます。
それと、インフレが通貨価値の下落だと考えると、日本で生活する上では円という通貨の価値に注意する必要があるわけですが。
世界の基軸通貨は米ドルです。つまり円が米ドルに対してどのくらいの価値があるかを見るのが、円の価値を考えるのに使えそうな気がします。
米ドルは基本的に、価値が減少していく資産だということは前に説明しました。つまりドルと円の取引価格が常に一定であれば、日本円の価値も一緒に下落しているということになりそうですが。
現状、ニクソンショック以降(当時1ドル360円)、ずっと円高の流れです。
米ドルの価値が下落していても、米ドルに対して、米ドルの価値下落速度以上に円の価値が上昇しているわけですから、考えてみれは日本がデフレ(円の価値が下落しない)になっているのも当然な気がします。
逆に考えれば、米ドルに対して、日本円の価格が一定もしくは安くなる(円安)になれば、日本にもインフレが来ると考えられそうです。
だとしたら、インフレ対策として米ドルの資産を保有することもありかもしれません。ただ、米ドル預金や債券などでは、米国のインフレに負けることになりそうなので、やはり米国株式などが投資対象になってくるのかもしれませんね。
ずばり言ってしまえば、外貨建て保険はインフレ対策になりませんってことです。外貨建て保険の投資対象は米国の債券がほとんどです。それだけでもインフレ対策にならないのに、さらに高い手数料というおまけまでついています。
もっとも簡単なインフレ対策は、物価連動国債を購入することですが。
今だと物価連動国債を購入しようとしても、投資信託からしか購入する手段がありません。そうなると、買付手数料や信託報酬手数料が余計です。物価連動国債自体のリターンは、金融機関の手数料ですべて消えてしまっているかもしれません、下手するとリターン以上に手数料の方が上である可能性だってありそうです。もしかするとデフレの最中に手を出すべきものではないかもしれません。
トレンドフォローの発想でインフレが確認できたり、ドル/円の流れが円安に変わったと考えた時に購入するという方法の方がいいかもしれませんね。
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