『歴史は「べき乗則」で動くー種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学ー(マーク・ブキャナン)』

『べき乗則』を知ると世界の見え方が変わる?

『べき乗則』、あまり聞きなれない言葉ですが、この言葉について考えるようになったきっかけは、この本『歴史は「べき乗則」で動く』の著者マーク・ブキャナンが書いた、『市場は物理法則で動く』でした。


『べき乗則』は、自然界のあらゆるところに存在していて、森林火災、地震、砂山の砂粒、磁石、株式市場、そして人類の歴史などなど、多くの世界が『べき乗則』に沿って動いていると考えらえています。

べき乗則とは、普段みられる変動が起こる回数に比べ、それの2倍の変動が起こる回数が1/2に、3倍の変動が起こる回数が1/4、4倍の変動は1/8にといったように、現象と回数が比例的に推移しているのではなく、稀なことが起こるのが指数関数的に頻度が減っていく傾向が見られるという話です。


結果として、とてもとても稀なこと、起こらないと思っているような不思議な現象が起こる確率というのは、単純な「正規分布」では表せない事になります。

たとえば、ブラックマンデーのような一日に22%以上の変動をする現象が、どのくらいの頻度で起こるのかを正規分布から算出しようとしてみると、宇宙の年齢をはるかに何週分も上回る時間の中でたった1日という計算になるそうです。決して有り得ないとは言えませんが、誤差にしてもひどい話です。


べき乗則で物事が観測できる要因として、『臨界状態』が挙げられると本書ではいっています。

この世界には、どういう理由かはまだわかってはいないけれど、自己組織的に臨界状態になるものがあるようです。

株式市場や森林火災、地震といったものがいい例で、自己組織的に『臨界状態』になるものには、一つの小さな変化が他のところに影響を与える特徴があるといっています。

例えば、株式市場で言えば、ある一人の人の発言が、一部の投資家の考え方に影響を与え株価が上がる。その株価が上がった様子が、また他の投資家に影響を与え株価を上げる。それを知った投資初心者がそれに便乗しようと株価を上げて、さらに株価が暴騰するみたいな感じです。

イメージとしてはカオス理論そのものです。

そして、臨界状態になったところで、小さな崩れが発生し、それが周りに影響を与え一気に波及し大崩れになる。

これこそまさに株式市場のバブル崩壊そのものです。


このような傾向が、株式市場や地震といったところだけでなく、私たち人や国の歴史にも見られると本書では説明しています。

○○革命のような時代の大きな変化の時には、株式市場のバブル崩壊に似たようなことが起こっているわけです。

たとえば、明治維新の時も、幕府や海外への懸念などが日本社会の中で臨界状態となり、尊王攘夷などの言葉で、あたらしい社会を思い描く坂本龍馬などの歴史の偉人たちによって国の方向性が示され、それによって多くのことが変化していき、全体として大きな事件となったということなのかもしれない。

まったくもって、株式市場と似たような現象です。

歴史や社会にも関係する物理学。『べき乗則』、とても興味深い話です。


株式市場を理解する?

はっきりとは思い出せないのですが、何かの本でバフェットが、株式投資家なら株式市場を理解することが大切だと言っていたような気がするのですが、本書の内容は、まさに株式市場を理解するのにとても役に立つと思います。

別に本書を読んだことで、バブル崩壊を予測することが出来るわけじゃありません。でも、バブル崩壊の起こる自然現象への理解は深まることと思います。

そして、その結果分かることは、株式市場が人の手によって動き、今後も臨界状態をつくる運命にあるのであれば、バブル崩壊という事件は、これからも今までと変わることなく何度も起こりうるのだろうということです。

そして、それを事前に予測することも、これまた不可能である。ということを、この本を読むことで理解することができました。


株価大暴落のような崩落は、地震と同じで最初のきっかけはとても小さなものから始まる。

ただその小さなものが連鎖的にいろんなところに波及することで、大きな変動になり、株式市場の大暴落や大地震になることがある。

問題は、最初の小さなきっかけが、他の所に波及することになるかどうかは、起こってみないとわからないということ。

その原因となる小さなきっかけはいつでも起こっている。

地震でたとえれば、体で感知できないような地震は常に起こっていて、その感知もできないような小さなきっかけが、たまたま周りに影響を与えることで、大地震につながることもある。

たくさん起こっている中で、たまたま他にも波及することになる、たった一つの小さなきっかけを、前もって見つけることは、現実的に不可能。

なので、株式市場の大暴落も大地震もきっかけとなる小さな動きを調べても、それがそのまま大暴落や大地震になるかの予測に結びつくことはないので、やっぱり大暴落や大地震がいつ起こるのかはわからないということになる。


株価大暴落のような大きな崩落現象は、きっかけをつかむことも、その小さなきっかけがどの程度まで波及するのかを事前に知ることも不可能。よって、株価大暴落を事前に予測することは不可能。

予測が出来ないのに、自己組織的に臨界状態になるものである以上、突然起こる大きな崩落は避けられない。

不思議だけれど、そういうものだという事がよくわかりました。

『べき乗則』という話は、とても面白い、知的な好奇心を掻き立てられます。

ちなみに、今回の『べき乗則』など、こういった視点から株式市場を理解するのに役立つと思う本を紹介するとしたら、次のものを挙げたいと思います。

0コメント

  • 1000 / 1000