『老後資産はドルで増やしなさい 毎月3万円で1000万円貯まる方法(浦井麻美)』

本当にそれでいいのか?

最近では、多くのファイナンシャルプランナーが否定している外貨建の保険。

さらに、金融庁などでも外貨建て保険の販売や存在意義に疑問を呈している。

そんな、外貨建て保険に対して逆風が吹いている中、あえてその外貨建て保険を推奨する本を書いているということに、まず目を引きました。

個人的にも、外貨建て保険に対して否定的な気持ちをもっているのですが、もしかしたら「目からウロコの情報が?」なんて思い、つい手にとってしまった感じです。


本書を読んだ後、結論から言えば、私の持っている外貨建保険への否定的な気持ちを払拭するほどのものはありませんでした。

また内容的にも、疑問に思う説明がいくつもあって、「本当にそれでいいのか?」と思うこともありました。


日本の国力が下がると円安になる説!

「日本は経済が衰退し、国力が下がり、日本の通貨である円が売られ円安になる」

日本経済に対して、終末論を繰り返す人がよくする説明です。そして、生命保険外交員がよく使っていた印象がある話です。

確かに、アメリカに比べれば、日本の経済が弱っていることは間違いないし、今後の強くなっていく見込みは、今の所なさそうです。

しかし、国力の低下と通貨の価値の下落を、イコールとして見てはいけないのではないかと考えています。


通貨の価値は、長期的には『購買力』の影響を受けると言われています。

『購買力』とは、ものを買う力のことで、言い換えれば、物価が上昇しているインフレの国の通貨の価値は下がり、デフレの国の通貨は価値が下がらないことになります。

確かに、短期的に日本の国債が売られるなどして、一時的な円安がくることだってあるかもしれません。

でも、長期的には『購買力』の影響のほうが大きいという考え方のほうが個人的にはしっくり来る感じがします。


実際、今までを振り返ると。

日本は長年GDPが0近辺、一時はマイナスのときもあったほど、国力は衰退していると言われていますが、日本の通貨である円に関しては長い間円高に推移してきています。

本書の中でも、そのことを理解していると思われる記述がありましたが、なぜかこれからは円安になるという論調を繰り返しています。

過去を見ると、国力と通貨の値段はイコールではないのかもと思うところがあるものです。

もっと言えば、日本のGDPが約−5%と最もひどかった2009年頃のドル円のレートは約84円、その後2011年に最高値の約75円にまで円高が進んでいます。

ちなみに、2011年頃のアメリカでは、株価指数のNYダウがリーマンショックでの損失を、すでに半分以上取り戻していました。

日本はご存知の通り、デフレが続いていて物価の上昇はほとんどなし。つまり、日本円の価値は保たれている傾向にあります。

反面アメリカは、その経済活動の活発さから、慢性的な弱インフレという傾向があります。

アメリカは強い国力故に、経済を動かすためにより多くの通貨を発行しているため、モノに対して通貨の価値が下落する、インフレ傾向のある国なのです。

『購買力』という視点から見れば、円高ドル安に動いているというのは、当然なのかもしれないわけです。

「本書の理屈に惑わされるのは、ちょっと危険かな?」というのが個人的な感想です。


ただ、未来というのは予測できるものではありません。

今は国力=為替レートになっていなくても、将来はそうなってくる可能性があることだって否定しません。

それでも、今の状況を見ていて、将来国力=為替レートになると想像して投資をすることは無謀な気もしています。

ましてや、換金しにくい。言ってみれば、いざという時に逃げにくい、「生命保険」という金融商品をつかってそれをやることは、あまり賢い選択だとはどうしても思えないのです。


さらに本書で著者の「ファイナンシャルリテラシー不足か?」と思わされる話が、外貨建て保険でドルコスト平均法を持ち出したことです。

外貨建て保険の多くは、外貨で保険料を支払うので、日本円での支払いは、毎月一定にはなっていません。

ドルコスト平均は、価格が変動してるものを、毎月一定の金額で買うことで、価格が大きく下がることがあっても、少し価格を戻せば、損失を取り戻せるというところにあります。

変動に合わせて購入金額を変動させていたら、ドルコスト平均法にはなりません。

外貨建て保険は、外貨ベースで見たら、株式や債券のような価格の変動はありません。

ドルコスト平均法が効果を発揮するための要素は、①価格が上昇していくこと、②価格変動が大きいこと、の2つが必要です。


残念ながら、やはり外貨建て保険の良さは本書ではわからなかったです。

本書ですすめている外貨建て保険での資産形成をするなら、普通に米国債券をドルコスト平均法になるように積み立てていって、本書で言うようにコアサテライトのサテライトで株式投資やETFを利用するというやり方のほうが、運用法に柔軟性を持たせられるなど、様々な面からみて有効なような気がしました。

ちなみに、だいぶ前ではありますが、金融庁のレポートに外貨建て保険に積立するなら、外国債券と掛け捨ての定期保険を組みわせたほうが効果的という検証結果がでていたことを思い出します。


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