逃げて勝つ 投資の鉄則 大負けせずに資産を築く10年戦略(田中 泰輔)

いまや、『長期、分散、積立』は常識ではない⁉

この本は、今投資や資産運用で常識となりつつある、長期投資の考え方に一石を投じるような話となっています。

今の投資や資産運用の常識といえば、『長期、分散、積立』です。

そこには、『買う』という考え方しかなく、『売る』という視点がまったくもってありません。

しかし、この『売る』という考え方は、投資や資産運用にとって、とても重要なことなのです。

なぜなら『売る』ことによって、利益を確定したり、損失を限定したりといったことができるようになるからです。

ただ、この『売る』というのは、『買う』よりも、遥かに難しいことであるため、簡単にアドバイスできるようなものでもなかったりもします。

そのため、多くの投資アドバイザーが、『売る』という考え方を排除して、買い方だけに着目し、『長期、分散、積立』を強調するようになってしまったのかもしれません。

実は、長期投資で有名なウォーレン・バフェットでさえ、適度に売却を繰り返しています。

そもそも、『売る』ことなくして、長期投資というのは成立しないのではないのかと、個人的には考えています。

そんな『売る』ということを強調しているこの本は、今まで長期、分散、積立を資産運用の常識だと考えていた人に、新たな気づきを与えてくれるかもしれません。


経済や市場には、サイクルが存在する。

経済や市場のサイクルを理解するのに役立つおすすめの本といえば、ハワード・マークスの『市場サイクルを極める』があります。

今回紹介している『逃げて勝つ投資の鉄則』でも、経済や市場のサイクルについての話があります。

『売る』という行為は、このサイクルの波に上手に乗れるようにするという目的があります。

とくに、リスクコントロールにおいて、『売る』という考え方は、とても重要な役割を持っています。

そもそも、長期、分散、積立の運用がうまく当てはまっていたのは、この10数年の期間の話です。

しかもこの10数年間は、稀な期間で、これから先も、同じような結果になると思うことは、とても危険です。

本書の説明によれば、今2020年から30年前、1990年から日本の株価指数であるTOPIXに積立投資をしていたらどうなっていたか、実は、その積立期間の中の20年間は、ほとんど利益がなかったという話でした。

もっと言えば、積立額よりも資産額が下回っていた(損していた)期間のほうが長かったというグラフが載せられています。

いろいろとその時の特殊な状況もあったのかもしれませんが、安易にただ買って保有していればいいというのは危険だということを感じさせる話です。

投資というのは、不確実性と付き合っていくことです。そこを忘れてはいけません。

もしもというリスクに対する対処法を知らずに、投資をすることの危なさを感じます。

そしてそのリスクに対処する一番の方法が、『売る』という考え方であるわけです


『売る』を考える大切さはわかるけど。

『売る』というのは、とてもむずかしい。

投資の難しさは、『買う』ことよりも『売る』ことにあると言っても、間違いではないと思っています。

そして、この『売る』ということの難しさは、やったことのある者にしかわかりません。

本書の内容のほとんどは、経済指標や景気動向など、ファンダメンタル的な分析になっています。

実際に投資をやってみるとわかることですが、『売る』ときには、ファンダメンタル的な話よりも、価格だけに注目する、いわゆるチャートをみて取引する、テクニカル的な視点が役に立つものです。

本書にも書いてあったのですが、ファンダメンタル分析では、長期的視点で『買い』を行うことはしやすいのですが、『売る』ときには、長期よりも短期的な視点が強くなってくるものです。

つまり、『売る』という行為は、短期的な取引であるため、ファンダメンタル分析よりもテクニカル分析の方が重要になってくるのです。

短期的な市場の動きというのは、長期視点のように実態や本質に即したものになりやすいということはなく、その場の雰囲気や感覚によるところが大きくなる。

つまり、根拠や理論などはどこかへ行ってしまった、価格だけの世界になりやすくなっています。

そのため、短期投資や『売り』では、テクニカル分析で考えることの必要性が出てくるわけなのです。

本書でもそのことについて多少触れてはいましたが、正直、具体的な解説がほとんどなかったと感じました。

そのため、本書を読んだだけでは、実践の中で『売る』を行っていくには、不向きだとも感じました。

『売る』ことの大切さを説明する割に、『売り方』については、濁している。

生殺しにされているような感覚になりました。

本書では、ファンダメンタル中心で、『売る』を説明していますが、経験上、ファンダメンタル分析で『売り』をするのは、危険もしくは取れる利益を逃すことになりかねませんので、注意が必要でしょう。


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