物語形式にして、初心者にもわかりやすく、投資とお金について話をする本。
主人公の投資初心者のサラリーマンが、お金持ちの投資家から投資について学ぶという内容です。
投資について学びたい初心者にはあっている?
投資の話は、難しい言葉がたくさん出てくるものです。
経済やファイナンスって専門的な雰囲気もあるので、仕方がないのかもしれません。
しかし、本質的なところでは、案外とても簡単なものだったりもするものです。
「どうもひねくれた人間の性質なのか、簡単なことを難しくしたがる傾向がある。」
というバフェットの言葉もありますが、本当にその通りだと感じることが多々あります。
特に、本書の話題である投資やお金の世界ではその傾向が顕著になっているようです。
本書は、そんな難しい言葉をできるだけ排除して、投資や経済の言葉に免疫のない投資初心者でもわかりやすいように「投資」と「お金」について語っています。
投資初心者が入りやすい、投資の入り口としての役割を果たしていると言えるのかもしれません。
ですが、本当の投資を始めるためには、本書だけでは物足りないだろうなというのが感想です。
投資信託を売っている人の説明?
本書では、お金持ちの投資家が、投資のことについて何も知らない投資初心者に投資指南をするという話になっているのですが。
ただ、内容的には「本当にこの人は投資家なのか?」と思ってしまうような内容だと感じました。
投資を指南する先生の設定が投資家だという話だけど、本質的には投資信託を売っている人の話と同じという印象のほうが強かったです。
先生の話の結論的には、投資信託、できればインデックスファンドを複数組み合わせて積立投資をしようといったところに落ちついています。
まさに投資信託を売っているアドバイザーに多い説明です。
本書の中で「人と同じようなことを避ける」といった話がありましたが、最終結論通りのインデックスファンドの積立投資だと、避けるどころか、まさに人と同じことをすることになってしまいます。
本物の投資家だったら、そんな単純な結論には至らないような気もします。
「あえて人と違う道を選び、その中から可能性を探す」
というのが、本物の投資家の行動だと思っています。
ハワード・マークスという著名投資家が書いた「投資で一番大切な20の教え」という本では、人よりもうまくやれる得意分野を持ち、その得意分野に集中すれば、人よりもいい成績を挙げられる可能性が高くなると考えていると言っていました。
みんなで一斉にインデックスファンドに積立投資しようというよりも、このような考え方のほうが、ずっと投資家らしいなと思ってしまいます。
投資家という立場で書かれた本ではない?
結局のところ、本書は投資家という立場から書かれた本ではなかったのかなという印象です。
実際、著者の中桐啓貴さん自身が、投資家というよりも投資信託を販売するという立場だと思われるので、そこのところは仕方がないことなのでしょう。
日本の法律では、投資家と投資商品を売る人が、同じ人というわけにはいかないようになっています。
その理由は、利益相反の疑いです。
投資をしている人が、自分が保有しているものと同じものを他人に売って、値を吊り上げたところで、高値で売り抜けようとしている、といったようなことを危惧しているというわけです。
結果的に、投資信託を販売する人のほとんどの人が、自分自身が投資で資産を築いた投資家ではないということになっているわけです。
本書もまた、その例外ではなく、投資家ではなく投資信託を販売する人の考え方で投資の説明をしているように感じました。
投資信託を販売する側ではなく、投資家という立場になろうとしている私達にとっては、本書の内容と説明だけでは、疑問と不足感を感じ得ないと思った次第です。
ただ、投資初心者が最初に入る本としては、いい感じにできているようにも思います。
正直なところ、話の進み方からしても物語形式にした理由はあまりないのではと思ったりもしましたが、それはそれで入りやすさというところでプラスに働いているのかもしれません。
本書を読んだ後、投資を始めようかなと感じた人は、ぜひ今度は投資家が投資家という立場から書いている本を読んでみてほしいと思います。
0コメント