資産形成アドバイザー タナカ

保険や投資信託の仲介や販売をするといった、金融機関から独立した立場でファイナンシャルプランニングの相談や投資・資産運用講座などを行っています。

https://fpoffice.okane-iroha.com/

㈱あせっとびるだーず 
 代表取締役 田仲幹生 です。
【保有資格】
 CFP
 1級FP技能士
 宅建士

生命保険会社に勤め、その後税理士事務所に勤務すると同時期に、投資信託や株式投資を始めたが、2年後リーマンショックという株価大暴落に巻き込まれ、総資産の半分近くを失いました。
しかし、そ

記事一覧(710)

『MEGATHREATS(メガスレット)世界経済を破滅させる10の巨大な脅威』ヌリエル・ルービニ (著)

世界を破滅させる脅威の存在を知る。リーマンショックなどの世界金融危機を予言した、破滅博士との異名を持つヌリエル・ルービニ。そのルービニによる今の世界にはびこる世界の脅威についてかかれた本です。本書を読んだ正直な気持ちとしては、内容のほとんどが詳細なデータを持っての説明ではなく、よく見かける不安をあおるようなストーリーの話だったで、信用するには根拠が足りないような気がしたのと、ちょっと話が悲観的すぎるのではないかと思うところが多かったのですが、それでもだからといってそのすべてを無視できるような話でもないと感じました。ルービニの語る世界の脅威には、まだ表面化はしていなくても、実際になんとなくの感覚で「不安だな」と感じているようなところが多いです。世界的な債務の拡大で、今まさにバブルが起こっていて、その崩壊が近々あるのではなか。その時には、いったいどんな崩壊の仕方をするのだろうか?技術革新は喜ばしいことだけど、AIによって失われる仕事に、自分も含まれているのではないだろうか?そして、それは自分だけのことではなく、世界中で失業する人がふえることになるのではないだろうか?今まで大雨にならなかったような地域が洪水になったり、大規模な山火事が起きたり、季節の変わり目が変に感じたり、地球温暖化などの環境問題は、本当に解決できるのだろうか?また、環境問題によって、私たちの生活はどのように脅かされていくのだろうか?アメリカと中国の対立が強くなり、トランプ大統領などの台頭によって、アメリカ自身の民主主義も今までとは違ってきているのかもしれない。また、どんどん拡大していく格差は、どこまで開いていくのだろうか、格差が拡大することで治安が悪くなったりしないだろうか?現に最近ニュースを見ていると、いろんな今までにないような犯罪のニュースが目に付くようになってきた気がする。これらの問題は、まちがいなく今存在している。そのことは、誰もがわかっている。でも、見ないようにしているのかもしれない。臭い物に蓋をしてしまっているのかもしれない。そんな私たちに、改めてその脅威を知らせようとしている。それが本書の目的なのかもしれません。個人的には、どの問題もそれほどひどいものになるとは正直思っていません。もしそんな悲観的な未来を想像していたらとても投資なんてできるはずありません。しかし、たとえそれほどひどいことにはならないと考えていても、この話は知るべき脅威だと感じました。なぜなら、肌感覚でその脅威が迫っていることは実感できるからです。ルービニの本書で挙げた、これらの脅威に共通することとして、じわじわと脅威が拡大し、一気に表面化して暴れだすということがあげられます。金融市場のバブル崩壊と同じ道をたどる脅威だということです。じわじわと脅威が大きなものとなっている間は、気づかず、そしてあまり関心を示さず、どんどん大きくなってく脅威を脅威とかんじないまま時が過ぎていき。突然泡がはじけたように、大きな事件となって問題が表面化する。膨大に拡大していく国や民間の債務。経済的に何か問題が起これば、すぐに借金で解決しようとする姿勢。地球環境がじわじわと変わってきているのに、環境問題解決のコスト負担をおそれて現実的にはどんどん先延ばしにしている。歴史的な規模で格差が拡大している中で、政治的な思惑があるのか、その解決策は一向に示そうとしない。格差是正の代表的な一手といえば「課税」ではあるのだけれど、票数獲得のためか減税することはあっても富裕層への課税は先送りしてしまっている。まさに「ゆでガエル状態」の問題ばかりです。これらの蓄積されてきた問題が一気に噴き出したとき、どうなってしまうのだろうか?そしてルービニも最も警戒しているのが、これらの問題が単独で起こるのではなく、同時にいくつもの問題が一緒に起こった時、いったいどんなことになるのだろうかということです。おそらくそうなった場合には、解決することはできないだろうというのがルービニの見立てのようです。不必要に悲観的になることがいいことだとは思っていませんが、今あるこの本にかかれた脅威については、知っておいてもいいと思いました。

資産形成にお薦めの投資信託、『全世界株式インデックスファンド』は、本当に最善の選択肢なの?

全世界株式インデックスファンドが最善?「資産運用するなら、全世界株式インデックスファンドがおすすめです。」という言葉をよく見ます。一か国に集中するよりも、複数の国に。先進国だけでなく、新興国にも投資する。あらゆるところに分散して投資する方のが、リスクが小さくて理にかなっている。また、インデックスファンドを利用することで、低コストで効率よく運用できる。それと、投資対象の株式は、世界の経済成長をそのまま反映させることが出来るため、債券など他の資産に投資をするよりも、成長力が高い。よって、全世界の株式資産に、インデックスを通じて投資をする。全世界株式インデックスファンドが資産運用の最もいい選択になる。そういわれると、「投資をするなら、もうそれしかない。」とも思えてもくるものです。全世界株式インデックスファンドは、器用貧乏?「何でもできるは何にもできない。」投資信託に限らず、結構いろんなことに当てはまる言葉です。全世界株式インデックスファンドが、この「何でもできるは何もできない」になっていないか心配です。投資って、すべてのことに対応できるようにしようとすると、結果的にほとんどリターンがないことになったりするものです。投資においては、全面的に欲張りになるのは良くない。分散投資においても、不必要に分散しすぎることに、あまり意味はない。むしろ分散のしすぎは、運用のコストが増えることにつながって、本来得られるべきリターンを減らすことにもなりかねない。投資の神様といわれるウォーレン・バフェットは、ほとんど米国株だけで世界トップクラスの資産家になった。逆に、インデックスファンドにだけ投資をしていて、資産家になれたという話を聞いたことはほとんどない。インデックスファンドほど分散してしまうと、結局『無難な結果』になるだけだから、それも当然です。資産形成において最も重要な事は、継続することだと思っている。集中投資だけでなく、分散投資であっても同じ事。資産運用の投資先としてインデックスファンドを選択したとしても、投資し続けることが出来なくなってしまえば、なんの資産形成にもならない。だから、『続けられること』という視点で投資を考える必要があると思っています。投資を楽しいと感じることによって、投資を続けるモチベーションになるのなら、インデックスファンドを使わず、個別銘柄に分散して投資をすることだって正解だと思う。はっきり言って、インデックスファンドはつまらない。インデックスファンドは、儲かっているときは良いけれど、含み損が増えだしたら、気分よく継続して投資ができるような投資対象ではないと個人的には感じている。投資先が分散されすぎているがために、自分の投資対象がぼんやりしてしまって、明確な保有の意思が保ちづらい。反面、配当利回りが高い企業、優待品をくれる企業、好きな商品を作っている企業、いつも使っているサービスを行っている企業、そういう所を見ることが出来る投資は、継続して投資をするモチベーションを持ちやすいと感じている。分散させすぎるのは、そんな弊害を持っているのではないだろうか?まして、全世界に分散してしまえば、そのインデックスファンドの価格以上に、自分の目に見えるものはほとんどなくなってくる。人の見える景色は、思っている以上に、狭いようです。自分の身の回り以上のものは、見えているようで、結構見えていない。だから、『全世界株式インデックスファンド』が最善の選択肢だと考えることには、ちょっと疑問がある。最善の投資先は、人によって違う。結論から言えば、その人が、どんな環境になっても、継続して投資ができるようなものなのかどうか、それが一番大切な事なんじゃないかと思っています。

『運動脳』 アンデシュ・ハンセン (著)

健全なる精神は、健全なる肉体に宿る?古代ローマの詩人・ユウェナリスの名言「健全なる精神は、健全なる肉体に宿る」は、どうやら本当だったらしい。脳は、運動することで健康になる。そして脳が健康であるということは、心が健康であることにもつながってくる。運動には、ストレス解消、うつ・認知症の改善に効果があるだけでなく、脳機能の改善や脳の若返りなどにも効果があるのだそうです。うつや認知症の改善に、よく薬を使われることがありますが、科学的根拠からは、薬よりも運動の方が効果があることが分かっているとのことでした。そして意外だったのが、スマホアプリなどでよく見かける、いわゆる脳トレが、まったくもって効果がないという事実。結局身体を動かさなければ、脳の機能は改善しないのだそうです。身体と脳はつながっている。まさに一心同体のものであるので、健康な体にこそ、健康な脳、そして健康な精神が宿ることになるということのようです。本書を読んで気づいたのが、脳の機能の衰えというのは、ある機能が欠落して起こっているというものではなく、脳内で起こっていることのバランスが崩れることで、脳の機能が衰えているように見えるということでした。例えば、「うつ」といわれる症状には、海馬と偏桃体の機能のバランスの崩れが影響しているのだそうです。つまりはバランスが大切で、ただ海馬の機能が衰えているというだけではないのだそうです。もし海馬の機能が衰えていたとしても、偏桃体も同じように衰えてバランスがとれているようであれば、「うつ」のような症状はでないということなのかもしれません。似たように、ストレスや認知症、モチベーション、集中力、記憶力、学習力、すべての脳の機能というのは、どの機能が欠落しているのかと考えるよりも、全体のバランスがとれていることが大切なのだそうです。そして、そのバランスを整えてくれるのが、『運動』というわけです。運動には、いろんな分野の脳内活動を、連携するように活性化する効果があるのだそうです。考えてみれば、身体を動かす運動というのは、自分たちが思っている以上に複雑にできているものです。二足で歩くという行為一つとっても、ロボットで実現するのはとても大変だという話を聞いたことがあります。目というセンサーで周囲の把握、着地時などでバランスをとる、転びそうになるなど、もし身体が傾いたときには、その傾きを計算し、即座に体のどこかでバランスを調整する。簡単なようだけど、センサーとしての脳の活動、そのセンサーに対して次にどうするかの命令、といったことをそれこそ瞬時に大量の情報を処理してくれています。ましてや、ただ平坦な道を歩くだけでなく、でこぼこの道やぬれた滑りやすい道、時にはスピードを上げたり下げたり、さらに走ったり、スキップしたり、ボールを投げたり、当たり前のようだけど、一体これにどれだけ大量の情報処理が必要なのか、考えてみるととてつもないことのように思います。だから、運動するだけで脳の機能はフル活用されるということなのかもしれません。しかも机に座ってする勉強と違い、運動は脳のすべての領域を一体として使うことになるので、脳の機能を強化するだけでなく、バランスを整えるのにも効果的ということになるのだそうです。「運動するだけで頭がよくなるなんてありえない。」と思うかもしれません。私もそう感じるところはあるのですが、実験ではすでに「運動をよくする子供は学習能力も向上している」という結果もあるのだそうです。運動するということの大切さを改めで考えさせられる本でした。ちなみに、どんな運動が脳にとっていいのかというと、現段階の研究では、筋トレなどの筋力をつける運動ではなく、心拍数の上がる有酸素運動がいいそうです。ランニングなら20分以上、可能なら45分以上行うと脳は最高のコンディションになるのだそうです。そして、さらに強度を強めたインターバルトレーニングを続けると、脳は強く若返ることもあるのだそうです。「よし!運動を始めよう」という気持ちになる本でした。

『価値の探究者たち』 ロナルド・W.チャン(著)

「価値の探究者?」これってなんの本この本のタイトルは、「価値の探究者たち」。一体何の本なのかタイトルからは、はっきりとしたイメージがわかなかった。表紙の絵もどういう意味合いを持っているのか不明瞭でした。投資関連の読み物であるから、投資にかかわる話であることは間違いないわけなのですが。しかし、読んでみるとその意味がよく分かります。この本は、『バリュー投資』に関する本でした。投資する先の本質的価値に注目し、その価値よりも安く売られている資産を買うというバリュー投資というスタイル。そのバリュー投資を実践している複数の著名投資家たちの物語がこの本の中にあります。なぜバリュー投資というスタイルに行きついたのか。バリュー投資という考え方と人の生き方。思想としてのバリュー投資。バリュー投資の本質。そういったものが、バリュー投資家たちの人生を紐解くことで見えてくる。バリュー投資という考え方を知るのに、最適な一冊だと思います。バリュー投資といえば、ウォーレン・バフェットが有名です。ウォーレン・バフェットは、ベンジャミン・グレアムというバリュー投資の父と言われる投資家に師事し、バリュー投資のノウハウを学び実践していくことで投資家としての道をスタートしました。いまでは、グレアムの投資戦略から離れて独自の投資スタイルに変わってはきていますが、それでも今もグレアムの思想を受け継いでいるような感じを受けます。そして、バフェットは世界一の投資家と言われるようになり、世界有数の資産家になっています。そのバフェットの師であるベンジャミン・グレアム。やはり偉大な投資家であったようで、本書の中でも幾度となくグレアムの名前が登場してきます。株式投資のバリュー投資という世界を築き上げたベンジャミン・グレアム。投資家の世界では、この人はすでに伝説へとなってきているのかもしれませんね。バリュー投資は永久に不滅?バリュー投資といっても、そのスタイルや投資戦略には様々な方法や考え方があり、答えは一つじゃありません。それこそ、同じバリュー投資を目指していても、一人一人の個性のように違いがみられます。現に、バリュー投資の父と言われるベンジャミン・グレアムの投資戦略をそのままそっくり実行している人は、今の時代ではおそらくいないと思われます。また、グレアムといえばバフェットと言っても過言ではないぐらいつながりの強い投資家同士でも、その投資スタイルはまったくの別物といった感じです。ただ一つ同じことは、『本質的な価値よりも安く買う』ということだけです。この本には、たくさんの成功したバリュー投資家たちが出てきます。それぞれが、どんな思想や考え方をもとにバリュー投資を行っているのか。またその投資スタイルや投資対象など、様々なバリュー投資の在り方を知ることできます。それぞれが、それぞれ違う投資をしているため、自分がどれを参考に投資をしたらいいのか分からなくなるかもしれません。でもそうではないということにも気づくことと思います。多様なバリュー投資の在り方を学ぶことで、『自分流のスタイル』を作ることの大切さを実感すること思います。投資は、決して人まねで終わってはいけない。最終的には自分流を見つけていかなければいけない。投資とは個性そのものということなのでしょう。考えてみれば、お金という存在自体、お金の使い方、稼ぎ方、もらい方、払い方、管理の仕方、すべてにその人の個性が現れてくるものです。投資が個性であるという話も、何ら不思議ではありません。むしろ、個性を考えない投資は、かえって悪い結果をもたらしかねないとさえ思っています。そんなことに気づくことができるという意味でもいい本だと思いました。それともう一つ、多様なバリュー投資家の在り方を知ると、次第にすべての投資家の中に共通する何かに気づくことができるということも、本書の魅力なのかもしれないと感じました。「バリュー投資の本質とは何なのか」、「ほとんどすべてのバリュー投資家に共通していることとは?」、それに気づくことができれば、あとはその本質から外れないように、自分の性格や感性にあわせた投資戦略を作っていけばいいということにも気づくことができます。そしてそれは、一生涯使っていけるもになっていくことと思います。本書を読む限り、バリュー投資は、その本質を変えず、どんな時代に対しても柔軟に適応してきました。そしてこの先の未来も、きっとバリュー投資は様々に変化し、また進化しながら、生き残り続いていくものなのだと思います。

「勉強することで、投資や資産運用で儲かるようになれる。」って思っていませんか?

投資や資産運用で頭の良さは関係ない。投資や資産運用に、頭の良さは関係ないようです。投資の神様と言われる米国の著名投資家であり世界トップクラスの資産家でもあるウォーレン・バフェットも、投資においては、普通のIQがあればそれ以上のIQは必要ないと言っていました。それと同時に、「いっぱい勉強すれば、投資が上手くなって、もっと投資で稼げるようになる。」というのも都市伝説だと思っています。勉強さえすれば儲かるという程度のものなら、投資で儲けることはとても簡単なことになる。そんな単純なものなら、もっとたくさんの投資家が、投資で生計を立てていてもいいはず。これは投資家だけでなく、事業家にも当てはまることだと思う。勉強や頭の良さだけでは解決できない何かが投資にはあるようです。投資の勉強は無駄なのか?いくら投資の勉強をしたって、そのままその勉強量に比例して、投資での稼ぎが増えるという事はないようです。ほとんど投資の勉強なんてしていないのに、大きな利益を手にしたという人は実際沢山いる。(儲かった後も、そのまま儲かり続けるかどうは別ですが・・・。)また、たくさんの書物を読んで投資の勉強をしていても、それほど儲かっていないという人も沢山いる。勉強量と投資の儲けはどうやらあまり関係がない。じゃあ、投資の勉強をすることは無駄なのだろうか?実は、投資の勉強をする意味は、儲けることではなく、損しないことにあるのだと思います。投資で儲かるかどうかは、実際には「運」によるところがとても大きい。運があれば儲かるし、運がなければ儲からない。そこには、知識も知恵も情報もあまり意味はない。でも、知識や知恵がある人は、損しても大きな損をしない傾向があると感じます。リスクを敏感に感じ取って前もって回避していたり、またリスクへの対処法を知恵として持っていて、大きな損とならないような工夫をしていたりする。結果、あまり損しない。このあまり損しないというのが、投資の勉強をしている人の特徴だなと感じています。そしてこの『あまり損しない』というのが、長期的には大きな力になることがある。運がよく大きな利益を手にしたときに、勉強が足りない人は、その儲けがいつの間にか消えてしまっていることが多い。でも、勉強をしている人は、大きな利益を掴むチャンスをつかんだ後、その利益をあまり減らさないようにすることが出来る。そうやって、利益を積み上げていくことが出来る。しょせん投資が「運」であるなら、長期的に投資をしていれば、いつか「運」を掴むことがある。勉強している人は、そのことも知っている。「運」で得たものを、ただの「運」で終わらせない方法を学ぶのが、投資の勉強なんだと思います。儲けるだけなら、投資の勉強はきっと必要ない。でも、長い時間軸で儲けたいなら、投資の勉強することは必要な事だと思います。

『ウォーレン・バフェットの生声』デイヴィッド・アンドリューズ(著)

投資でもっとも大切なこと。「投資でもっとも大切なことは、理論でもデータでもなく、哲学だ」と改めて思わされる本。今では、現代ポートフォリオ理論やCAPMなどの金融の科学的理論を用いて運用するスタイルが多くなってきました。多くの投資信託や最近人気のロボアドバイザーといった投資商品だけでなく、投資や資産運用のアドバイスを行っている投資アドバイザーやファイナンシャルプランナーといった人たちまで、現代ポートフォリオ理論などをもとにアドバイスを行っています。でも、実際の投資の現場ではそれでは解決できない問題を多く抱えている。しばらくうまくいっていたことでさえ、突然通用しなくなることもあったりする。もちろん現代ポートフォリオ理論もその一つであると思っています。結局、投資の世界で最後に残るのは、投資について深く考える考え方、つまりは『哲学』なんだと思います。哲学のない投資は、きっとどんなに有益な方法や理論であっても、机上の空論といわれるものになってしまうことでしょう。その投資の哲学を学ぶためには、長年投資の現場で実践してきた人、そしてその中でも実績が豊富な人から投資の考え方について学ぶのが良いと思っています。この本の主役でもあるウォーレンバフェットは、その考え方に触れたことで投資が上手くいくようになった人が少なくないと考えられる投資の世界の偉人です。ウォーレンバフェットとランチをする権利を得るために、25億円超のお金が動いたという話もあります。直にバフェットと話をして、その考え方を肌で感じてみたいということなのでしょう。投資で成功したいなら、投資の哲学を学んだ方がいい。そしてその教科書として、バフェット以上の人はいないのではないかと思っています。さすが投資の神様と言われるだけのことがあります。投資の哲学を学ぶというのは、ウォーレンバフェットの投資の仕方だけを学ぼうとすることではなく、その奥の投資の考え方を学ばなければなりません。そして、バフェットの考え方を学ぶなら、バフェットについて誰かが解説したような言葉では意味がない。バフェット自身の言葉から何かを感じ取る必要があるのだと思う。この本は、「生声」というタイトルにある通り、バフェットが実際に発した言葉がそのまま書かれている、なんの脚色もない辞書のような本になっています。まさにバフェットの考え方に触れるための本のようになっています。頭でっかちに考えてバフェットの言葉に触れるのではなく、素直に、感じたままに、その言葉一つ一つに触れてみるのもいいかもしれません。投資で成功するためには、理論や科学的データよりも必要なものがあるということについてのバフェットの言葉。「投資で成功するかどうかと知能指数は、IQ25以上なら関係ありません。平均並みの知能さえあれば、そのほかに必要なのは、投資をする際にトラブルの元となりがちな衝動をコントロールできる気質です。」(本書82ページより)

全資産の運用もこれでOK? バランス型運用のETF。『NEXT FUNDS S&P米国株式・債券バランス保守型指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信(2863)』

ETFでもバランス運用ができるようになった。ETFといえば、日経225やS&P500などの株価指数や先進国債券の指数などに連動するように作られたものが多く、基本的には、単一の資産で運用されているものがほとんどでした。そのため、株式と債券、またはREITなど、複数の資産を含めて運用するバランス運用は投資信託の独壇場でした。しかし、そんなバランス運用をETFでも利用できるようになりました。その一つが今回紹介する、『NEXT FUNDS S&P米国株式・債券バランス保守型指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信(2863)』です。このETFの投資先は、米国の株式と米国債券。具体的にはS&P500と米国債7-10指数(米国債券の7年物から10年物でできた指数)。単純化して言えば、米国市場の株式と、米国の長期国債といったイメージになります。この2つの資産を、S&P500に25%(1/4)、米国債7-10に75%(3/4)という配分で、定期的にリバランスしながら運用するスタイルのようです。しかも、両方の資産に為替ヘッジをつけているため、円高や円安に動く為替変動の影響がないように設計されています。米国の株と債券に投資をしますが、為替が円高に動いたときには不利になるかもという不安を考えずに運用ができるため、名前通り『保守型』というイメージがぴったりです。バランス運用のメリット。投資信託やこのETFなどで運用するバランス運用は、『自動的にリバランスされる』というのがメリットだと考えています。リバランスというのは、株や債券の価格が変動すると、最初に組んだポートフォリオのバランスが崩れたとき。その崩れたバランスを整えて、最初に設定した株25%、債券75%に定期的に直していくことです。このリバランスによって。株価が上昇して株式の割合が25%以上になった時には、株式を売却して、債券を購入する。株価が下落して株式の割合が25%を下回った時には、債券を売却して株式を買うということを行うことになります。つまりは、株価が上がれば売却し、株価が下がれば追加で購入するという、上げれば売り、下げれば買いというリズムが出来上がります。株式投資の儲け方は、どんな方法であれ、「安く買って、高く売る」という答えに行きつきます。バランス運用では、リバランスを行うことで、それに近いことが自動でできることになるわけです。また、それらのリバランスなどの運用戦略や、ポートフォリオ理論で説明されている話などを考えると、株式一択や債券一択の場合よりも、価格変動がマイルドになる傾向が考えられます。今の経済状況を考えると、債券のみのポートフォリオよりも、低リスクで高リターンになる可能性もあるのではないかとさえ思っています。ETFならでは低コスト。『NEXT FUNDS S&P米国株式・債券バランス保守型指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信(2863)』は、ETFなので、似たような投資信託と比べても低コストで運用できます。このETFの信託報酬手数料は、0.253%となっており、中にはこれよりも信託手数料の低い投資信託もあるのかもしれません。しかし、ETFは現物株式と同じように、証券会社の口座によっては『貸株サービス』が使えることがあります。このETFの貸株金利は、2023/1/14時点では、SBI証券や楽天証券で0.4%となっていますので、いわば信託報酬手数料よりも高い金利がついている感じです。つまりは、実質信託報酬手数料が0どころか、プラスαで金利がついている状態と言えます。ETFなら、売買がリアルタイムでできるし、売買手数料が無料の口座を利用すれば、買付時の手数料も無料で運用できます。ポートフォリオの保守部分として、このETFの利用を考えるのもありだと考えています。また、資産運用に慣れない人や、株式投資は怖いと感じている人などは、このETFから始めるのもいいかもしれません。極端な話、人によっては、このETFだけで運用するのもありかもしれません。

『個人投資家もマネできる 世界の富裕層がお金を増やしている方法』志村 暢彦(著)

お金を増やすポートフォリオの作り方ポートフォリオは、『保守的な投資』と『積極的な投資』、そして『超積極的な投資』で運用する。配分比率は、保守5:積極3:超積極2。いわゆるコアサテライト戦略という手法だと思われます。一般的なコアサテライト戦略が保守7:積極3のような保守的なものなのに対し、本書での資産配分は、若干攻撃的な資産配分です。しかも、通常の保守的な運用では債券などの価格変動のあまり大きくない資産をすすめるなかで、本書では、保守的運用から株式投資のポートフォリオを進めています。そう考えると、かなり攻撃的なポートフォリオ運用と言えるのかもしれません。そして、積極運用ではオプション取引を利用する。では、超積極はどうなるのだろうと思う所ですが、これはもう当たりくじ並みの、SPAC投資やベンチャーキャピタルといったところへの投資を薦めています。ここまで行くと、もう個人投資家レベルにとっては不必要なリスクを取っている運用だと思えなくもありません。正直、本書の内容では、投資戦略として何を目指しているのかがわかりにくく、ただ筆者の知識を披露しているだけのような内容にも感じました。つまりは、具体的な銘柄選択の基準や取引タイミングなどはあいまいで、実践で役立てるのには、結局読む人自身の創意工夫が必要になり、この本を読んだことで、そのまま投資や資産運用の腕が上達するという類の本ではないという印象です。しかし、本書の積極運用でオプション取引に触れているところには興味を持ちました。おそらく、あまり多くの人には知られていない投資法だと思われます。オプション取引というと、複雑で難しい投資というイメージを持つことが多いのではないかと思います。コールオプションとかプットオプションといった言葉もよくわかっていないし、「買う権利を売る」なんて言われると、「何のことだ?」と思う人がほとんどなのかもしれません。そんなこんなで、オプション取引にアレルギーのようなものを感じている人もいるのかもしれませんが、本書では非常にわかりやすくオプション取引について説明してくれています。複雑な説明を省いて、本質的なところだけを説明し、そして実践の仕方についても、簡単に説明しています。おそら多くの個人投資家が口座を持っているSBI証券などでも実際にやってみることができなくもなさなそうな方法でした。SBI証券で言う所の、ターゲットバイとターゲットセルという取引がまさに本書に書いてある戦略に近いのかなと思います。ただ、目新しい手法だとしても、所詮は金融取引ですから、メリットだけということはないと思われ、それで本当に儲かるのかどうかは私にはわかりません。保守的な運用と積極的な運用で、戦略を分けて運用する。そして、それぞれに配分する資金の割合をコントロールというのは正しい方法だと思っています。具体的な投資の仕方はいろいろあるにせよ、保守的と積極的に分けて運用を考えるやり方は個人的にもお薦めです。グローバルに投資をする?日本にいると、ホームバイアスによってどうしても日本株に投資をしたくなる。お金を増やすためには、それではいけない。世界中に目を向けてグローバルに投資をしましょうということも、本書では薦めいています。そしてこの手の説明をしている日本の書籍は、ほぼ例外なく日本株をダメ出しますが、本書も例外ではありません。日本のダメなところをいろいろあげて、日本株への投資割合を減らして、米国や欧州の超大手企業の個別株に投資することを薦めています。グローバルに投資をしようというのは、昔から言われています。でも、グローバルにと考えすぎるから、日本企業の株価が世界的にダメだとみられてしまうところもあるような気もしています。ここ数年は、証券会社も投資の雑誌もニュースも、日本株ではなく米国株を中心に関心が高い。結局、日本の投資家が日本株に目を向けないために、日本企業の株価が高くなっていない。つまりは、日本株は世界の株価の中でも、割安な水準にいることになる。本来なら、割安株を選考するバリュー投資家だったとしたら、自然と割安株の多い日本に目を向けるものです。ましてや日本人ならなおさらのことです。なぜか日本人が持っている、「日本はダメだ」というイメージから、割安株であっても日本株に投資ができない。これって、投資戦略が定まっていない、目先のイメージで投資をするダメな個人投資家の典型的なパターンです。ぐんぐん成長するグロース株を主戦場とするのか、今はまだ目立たない割安株を主体にするのか、自分がどういう戦略で個別株に投資をしようと思っているのかがない。本書のグローバル投資で腑に落ちなかったのは、グローバルに投資をしようといっても、どういう戦略での投資なのかがよく見えないところでした。ずばり言ってしまえば、まさにこういうパターンの個人投資家こそ「『インデックスファンド』を買えばいいんじゃないの?」というパターンのように思えてなりません。なぜなら個人的には、戦略の定まっていない個別株投資でいいパフォーマンスで運用できているという例をあまり見たことがないからです。

『SuperAgers スーパーエイジャー 老化は治療できる』ニール・バルジライ (著), トニ・ロビーノ (著)

老化は治せる病気なのか?「最近の研究によると、老化は一つの病気として、治せるものだ」という話をよく聞くようになった。『老化』と聞くと、いつか必ず訪れることになるもの、自分の身にも必ず起こる現象だと思っている人がほとんどだと思います。しかし、そうではないかもしれないという希望が最近は生まれつつある。実際に、マウスなどをつかった動物実験では、老化を予防するという現象が実際に実現できるというのです。老化といえば、それとセットのものでもあるといっても過言ではない、がんや心筋梗塞、糖尿病、といった生活習慣病。老化が治せるということは、これらの病気にもかかりにくくなるということを意味する。老後は必ず病院や薬が必要になってくるという当たり前がなくなり、私たちの健康寿命が延びることになるのかもしれない。これまでの常識的な考え方からしたら、まるで夢のような話かもしれない。でも、その夢のような話は、少しずつ近づいているようです。この本の著者や他の老化研究者たちは、その夢のような話を実現しようと、頑張っているということがよくわかる本です。老化とは何なのか?この本の著者たちは、老化という現象を研究するにあたって、健康で長寿の人たちスーパーエイジャーを研究することから始めました。その研究の結果、健康長寿は、遺伝によるところが多いということが見えてきたそうです。健康長寿といえば、健康な食生活や運動などの健康な生活習慣によってもたらされると思っている人は多いし、実際にそう思って食事に気を付け、ジムなどで運動をしているという人もいると思う。しかし、健康長寿の人たちの中には、タバコなどの不健康と言われている生活習慣がある者や、たいして運動をしていないような人もいる。それでも、いつまでも元気で長生きできているのは、なぜなのか?そこには、老化をもたらす体中の不要な物質などを除去する機能が、スーパーエイジャーたちは遺伝的に高いというのが、筆者たちの視点でした。健康長寿に役立つ機能があまり高くはない一般的な人たちは、その機能を高めるため、いわゆる『健康にいいこと』である健康的な食事や運動をする必要があるようです。私たちの体や動物の体には、基本的に『老化を予防する機能がある』という発見。ならば、その『老化を予防する機能』を高める『予防薬』が開発できないだろうかというのが、本書の主な内容です。老化という仕組みを理解し、老化を予防する。その研究が今盛んになってきている。ただ、老化を治すという考え方が、今はまだ社会的には『治療』という意味にはならないために、老化予防薬の開発には、いろいろと問題や制約があるようです。メトホルミンで老化は治せるを証明する?糖尿病の薬でもある『メトホルミン』。このメトホルミンには、糖尿だけでなくがんや認知症などの他の病気にも予防の効果があるようだということに筆者たちは注目しています。メトホルミンには、健康長寿の機能を助ける働きがあるのではないかと考えているようです。このメトホルミンを糖尿病という目的ではなく、老化予防という視点で実験・研究し、老化予防を実現できるという証明をする研究をしているそうです。そして、メトホルミンの老化予防の機能を調べることで、より効果的な老化を治す薬を開発したいと考えているようです。よくよく考えてみれば、「老化ってどうしておこるの?」と子供たちがどこかで聞いてきそうな質問なのに、実際に聞かれたら、うまい答えが見つかりません。宇宙や分子、量子といった様々なことが分かってきた今の時代にいるのに。なぜ年を取ると体に不具合が出るのか、病気になりやすくなるのか?、あまりにも普通のことすぎてで、また当たり前のことすぎて、私たちは思考停止になっていたのかもしれません。私たち一般人にとっての『老化』という現象についての知識は、地球が丸いということを知らなかった時代の人たちの宇宙の知識と同レベルなのかもしれない。私たちの体の細胞は、約4か月ですべて入れ替わっていると言われています。一番長い骨の細胞でも、4年で入れ替わっているという話です。入れ替わっているということは、すべての細胞が新しくなっているということです。すべてきれいに新しいものに入れ替わっているはずのに、不具合が出る、病気になる、衰える。そう考えると、老化って、なんか不思議な現象だなと思いました。子供でなくても、「老化って、なに?」と疑問がわいてくるものです。

『長期的バリュー投資の基本と原則 ――「低PER、低PBR、高配当」銘柄は裏切らない』ジム・カレン(Jim Cullen) (著)

失敗しない株式投資の基本と原則この本に書かれていることは、株式投資の基本と原則です。この本に書かれていることがすべてではないとは思ってはいますが、多くの株式投資家が、この本に書かれていることを忠実に実行すれば、おそらく株式投資で大きな失敗をすることはほとんどなくなるだろうと想像できます。そして失敗しないということは、そこそこのパフォーマンスを手に入れることにもなるのでしょう。個別銘柄への株式投資を行って、平均的な成績という人は、おそらく少ないのではないかと思っています。平均的というのは、一般的なインデックスファンドと同等の成績を意味します。個別銘柄への投資を行っている人の話を聞いていると、インデックスファンドよりも優秀な人と、インデックスファンドよりも成績の悪い人の2つのパターンに分かれているケースが多いと感じています。つまりは、「この本に書かれていることを実践すればそこそこのパフォーマンスになるだろう」という言葉の意味は、言い換えれば、「おそらく最終的なパフォーマンスはインデックスファンドを超えてくるんじゃないのかな」という意味で考えているということです。この本の投資戦略の基礎は、タイトル通り『バリュー投資』です。具体的には『PER』。これが絶対の原則としてあり、それを補完する意味で、PBRや配当利回りも検討して投資する銘柄を考えるというルールになっています。経験上でも、このルールに従っていたら、株式投資で大けがすることは、あまりないだろうなと感じています。内容はシンプルでわかりやすい。本書の内容は、とても分かりやすい。言いたいこともとてもシンプル。ゆえに、株式投資初心者にとっては、『バイブル』となる可能性のある本だと感じました。しかし、初心者向けであるわりには、値段が高いと感じる。また、投資玄人にとっては、内容がシンプルで素直すぎるために、値段の割に物足りなさを感じなくもない。それでも、この本を買った人が、もし株式投資初心者だったならば、この本の内容を素直に実践しながら株式投資を始めることは、個人的には大賛成です。また、いろんな無駄な知識をつけてしまった、投資玄人であったのなら、この本でもう一度基本に立ち返るというのも悪くない気がする。本音を言えば、もう少し本の値段を安くして、誰もが手に取りやすくなっていればよかったのにと思う所です。本書の内容を実践するにあたっての最大の懸念事項?本書の中でも説明されていますが、バリュー投資という投資戦略は、その有効性が学術的にも経験則的にも認められているわけですが、なぜか実践している人は、あまり多くない。その理由については、はっきりしたことはわからないけれど。投資する際にやること(考えること)も、パフォーマンスも「地味」ということがあるのではないでしょうか?本書の中でも、その辺をいろいろと指摘していますが、やはりその時代のスーパースター的な株式銘柄の魅力に比べると、バリューの銘柄は、パッとしない。それに、今までの株式市場の歴史の中でもバリュー銘柄が脚光を浴びた時代というのもほぼない。そしてさらに、バリュー投資の効果が明確になってくるまでには、「長い時間がかかる」。本書の中では、5年という時間がバリュー投資の効果を考えるための必要な時間だと説明しています。5年もの間、効果があるかどうかわからないことを、ただただ信じて実行するというのは、これはなかなか簡単なことではありません。言ってみれば、この本は、5年もの時間をかけて一つのことを信じて実行することができる「素直な人向け」の本なのかもしれない。でも、個人的な経験から言えば、この本の内容には、5年間を費やすだけの価値は十分にあるだろうとも思っています。

『猫が30歳まで生きる日 治せなかった病気に打ち克つタンパク質「AIM」の発見』 宮崎 徹 (著)

猫だけの話じゃない。まずは読んだ感想として、単純に「面白かった」。『猫が30歳まで生きる日』なんてタイトルだから、猫好きのための猫のお話だと思うかもしれない。でも、本当の中身はそうじゃない。猫の治療だけの話ではなく、人間の治療のお話でもあります。そして、筆者宮崎徹の医学という分野での挑戦と冒険の本でした。ほとんどの猫は、腎臓病で亡くなる。むかしうちで飼ってた猫も、やはり腎臓病で亡くなったことを思い出しました。最後は、とても苦しそうだったことを覚えています。猫にとっては宿命ともいえる腎臓病。しかしこの宿命かと思われていた腎臓病が治るようになるかもしれない。筆者である宮崎徹が研究している『AIM』というタンパク質に、その可能性があるのだそうです。そして、そのAIMというタンパク質は、人の腎臓病にも効果があると考えられていて、さらには、肝臓がんやアルツハイマー型認知症などにも効果が期待されているという話です。さらに付け加えると、この『AIM』という物質は、化学的な薬とは違い、もともと私たち人間や犬、猫などの生き物の体内にある物質なので、『AIM』を使った治療は、治すというよりも、もともと持っている自己治癒力を高めるものであるため、副作用などの心配も少ないと考えられているそうです。しかし、まだ人の治療に使うには、大きなハードルがあるようです。そこで筆者は、まず多くの猫にとって不治の病であった、腎臓病を治すための努力を始めたという話でした。筆者宮崎徹の冒険譚?猫が今よりもずっと長生できるようになるという『AIM』。その「『AIM』ってなんだろう」というところから手に取ることが多いと思われる本書ではありますが、この本の最初は、筆者である宮崎徹の自伝のような話で始まります。正直、はやく本題に入ってくれと思いました。しかし、最後まで読み終わてみると、その自伝的な内容もあってよかったように感じます。『AIM』という物質とその研究内容の話が中心ではあるけれど、その研究に賭ける筆者の熱意みたいなものは、きっとこの自伝的な話によって印象付けられているんだろうなと思います。そして、この『AIM』の研究がより進み、一匹でも多くの猫、そしていつかは、私たち人の今まで「治らない」とされてきた病気が、この『AIM』を活用することで治っていく。そんな未来を期待したい気持ちが強くなってくる感覚になりました。個人的な感想ですが、本書の帯にある養老孟司氏の「できるだけ多くの人に読んでもらいたい。」という言葉、まさにそれと同じ気持ちです。本書の最後に、「本書の印税の一部は、ネコと人間の腎臓病研究などの費用に充てられます。」とありました。『AIM』を世に送り出すには、多くの問題やハードルがあり、そこには当然お金のかかる問題もたくさんあるそうです。本書を買って読んだことで、そのお金の面で、微力ながらも「少しはその役に立てたのかな」という感覚は、なんとなくうれしくもありました。『AIM』にかける夢と期待。ぜひ本書を買って、読んで、その世界を感じてもらえればと思っています。

『父が子に伝える 13歳からのお金に一生困らないたった3つの考え方』 石原 尚幸 (著)

お金に一生困らないお金の話?子供にお金の教育をどうやってしたらいいのか、悩んでいる大人は少なくないようです。もちろん学校でもお金の教育なんてやっていない。学校の先生たちだって、おそらくお金の教育なんて、まともに受けてこなかった。でも、お金についての能力は、人生に直結する大きな問題です。子供のうちからお金についての教育をすべきだと感じるもの当然のことです。お金には、収入(主に稼ぐ)、支出(主に消費や投資)、貯める(主に貯金)の3つの流れがある。お金に一生困らないたった3つの考え方というのは、この、収入、支出、貯金の3つのことのようです。収入つまりは「稼ぐため」には、どのような考え方をするといいのだろうか?意外と気づかされたのが、「競争はしない。勝てない分野はむしろ逃げた方がいい。」とか、「好きなことではなく、人よりうまくできることをやる。」といった話でした。言われてみれば、全くのその通りなのですが、意外と気づいていないところなのかもしれない。理想的には、好きこそものの上手なれで、「好きなことを仕事にできるといいね」と教育されることが多いのかなとは思います。子供たちも、「ケーキが好きだからお菓子屋さん」とか、「サッカーが好きだからプロのサッカー選手」といったことを話したりもするものです。最初のうちは、それでもいいのかもしれない。けれど、本当にお金が稼げるようになるためには、「好きかどうか」はそれほど重要じゃない。「対して好きではないけれど、人から頼られる分野」、つまりは誰よりも上手にできる分野や、特殊なスキルを持っている分野。お金を稼ぐ人のほとんどは、そういう分野で仕事をしている。いくら好きでも人より下手だったら、その分野でお金を稼げるようになれることはない。ちょっと現実的すぎるのかもしれないけれど、お金を稼ぐということにおいては、それは真実なのだろうと思いました。この本には、そのような話がいくつも出てきます。ただ、「稼ぐ」という所の話は、いろいろ気づかされたことがあったけど、「使う」や「貯める」には、そういうものはあまりなかったなという印象も受けました。子供向けに書いたように、文も短く、話し言葉を多用して、読みやすくはなっていますが。おそらく子供が読むことを想定して書いたのではなく、大人が読むことを想定しているのではないかと感じました。子供のお金の教育をどうしていこうかと考えている大人が対象の本なのかなと思いました。